いつの間にかうとうと眠ってしまっていたようで母親に起こされた。文字通り、「バシッ」叩き起こされたのだ。
「痛っ!」
「唯、カケルの散歩!」

 ……まあ、私が「私が一人で行く!」って言ったんだけどさ、たまには代わってくれてもさ。声に出さずに心の中でぶつぶつ言った。

 仕方なく祖母の家へ向かうと、カケルの熱烈歓迎に不満も吹き飛んだ。
「お待たせ~! カケル!」
 リードを着けるのも待ちきれなくてぐるぐる回ってる。
「もう! じっとして!」
 ようやくリードを着けると走り出した。もう、おばあちゃん、躾ー!

 少し走ったところで思い出した。体が重い。私、今日ものすごく疲れてる。昼寝したのに……。

 そこに着いて、目を疑った。ベンチに、数時間前に別れた槇野くんがいたから。

「は!?」
 思わず声が出て、槇野くんが顔を上げた。私の心境などお構い無しでカケルが彼の足元に突進して行った。

「よーし、おいで、カケル」
 槇野くんがひょいっとカケルを抱き上げて、カケルはご機嫌で玉ねぎみたいな尻尾を振っていた。……いいなあ、カケル。
 じゃなくて、何でカケルの名前知ってるの……ってそれより

「どうしてここにいるの?」
 私は一番疑問に思っていたことを訊ねた。

「あ! ボール、部屋だ! 取ってくる」
 慌てる私の腕掴んで制止した。

「いいよ、今日は、ボールの代わりにカケル捏(こ)ねとく」

その言い方に少し笑った。カケルは既にふぅっとため息をついてうっとりと槇野くんに撫でられ……捏ねられていた。