「ごめん、あの……工藤先輩とか渕上先輩に比べたら、だよ」
「ふうん、下半身集中でウエイトする」
 ちょっとむくれたようにそう言うと

「何で渕上先輩の名前まで知ってんの」と、ボソッと言われた。
「いやー、何となく?」
「…………確かに、前に宮原さんが好みだって言ってた俳優にちょっと似てる。前に好きだった人も先輩なんだもんね」

 確かに?……はあ、誰だっけ、それ。前に好きだった人?……それも誰だっけ。

「ふうん? 石橋先輩と付き合ってるんだよ、渕上先輩」
 今日知ったゴシップネタを披露する。

「ああ、だから今日来てたんだ。あの綺麗な人」
「ふうん」
 石橋先輩のことは槇野くんも知ってるんだ。学校来てなかったくせに、よく見てる。

「渕上先輩も格好いいからお似合い」
「……ふうん」

 ……ふうん?何だそれ。それに、いつまで一緒に帰るんだろ。微妙な空気に会話もなく歩く。

 途中、バスケ部の自転車集団が追い抜いて行く。
「おー、槇野、彼女~!?」
 冷やかしたい声が聞こえた。

「違います」
「違います」
 否定する声は、私の方がほんの少し早かった。

「ふうん」
 槇野くんが私にそう言う。だから、『ふうん』って何だ?

 結局、私たちはお互いの家までの分かれ道ギリギリまで一緒に帰った。大した会話もしないまま。

「じゃあ」そう言って背を向けると
「……帰り、待っててくれるのかと思った」
 背中越し、槇野くんがそう言った。

 え?
 驚いて振り向くと、槇野くんは背中を向けてスタスタと行ってしまった。