「……宮原さん」
声をかけられて振り返った。槇野くんだ。

「ああ、帰るの?」
私がそう言うと、ふっとため息を吐く。

「帰るけどさ」
「うん、お疲れ様」
「……」

あれ、何だろう。横に並ぶ彼の顔を窺う。微妙な顔だ。
「どうしたの?」
「……いや、別に」

変なの。ゆっくり歩く私を槇野くんは置いていく気はないらしい。歩調を合わせてくれている。一緒に帰るつもりなのかな。それなら、と今日の試合の感想など語ってみようかと口を開いた。
「すごかったね」
感想とは言えない陳腐な表現に自分で笑いそうになった。いや、笑ってしまった。結局、これしか言えないのか私は。
「うん、すごい。俺さ、また妬まれたらどうしようって思いながらバスケ部入ったけど、余計な心配だった。全然歯が立たないの」
槇野くんの自虐的表現に笑う。笑ってもいいと思う。だって槇野くんは『歯が立たない』事を自覚してもなお、《《嬉しそう》》なのだ。

「工藤先輩と渕上先輩は、槇野くんと同じくらいの背だもんね」
「そう、俺どっちでもないからさ、今。工藤先輩ほどのゲームメイクも、渕上先輩くらいの安定感もない。全然ビクともしないんだもんなー、渕上先輩。下半身が低い」
「そんなに体重あるようにも見えないのにね」そうなんだよ、と頷く。
「うちの学校にウエイトルームあるんだよ。他の部活と共同だけど、ちょっと鍛えようかと思って。俺、軸ぶれぶれだよね」
「はは、うん、ひょろひょろ……」

あ、地雷踏んだ。槇野くんの表情からそれを悟る。
「ひょろひょろ……だった?」
「ごめん、言い過ぎた。ちょっとふわふわと……」
「え、ふわふわ!?」

槇野くんの足が止まってしまった。