一瞬。一瞬の出来事だった。工藤先輩が槇野くんにびっちりディフェンスしている渕上先輩にスクリーンをかける。槇野くんは回されたボールを器用にキャッチし、ふわり浮いてシュート体勢へ入る。心地好い、ネットをボールが通る音がした。

 チッと渕上先輩が悔しそうな顔をして、工藤先輩が槇野くんの腰を叩いた。
「ナイス! 槇野」

 渕上先輩がすぐにエンドからスローインする。ほんの数秒の攻防が何度も入れ替わり立ち替わりでゲームは白熱していく。

 ──タイムアウトのタイミングが来ると、私はずっと息をしてなかったみたいでへなへなとしゃがんだ。

「言わないの、唯! “槇野くん格好いい”言わないの?」
「ちょっと、今、無理~」

 ドキドキして死にそうだ。

「ちょっと、すごくない? みんな、格好良すぎない? 」
「でしょー? 男バスって迫力あって見るの楽しいよね」

 楽しいっていうか、死にそうだ。だけど、こんな興奮は久しぶりで気持ちが良い。

 タイムアウト終了のブザーに私はもう一度立ち上がった。

「渕上先輩、ディフェンス上手いね」
「うん、渕上先輩相手によくやってるよ、槇野。あの人、職人て言われてる」
「ぶっ、まあ何か顔も……そんな感じ。イケメン」と、ここは私も声のトーンを下げて言った。
「工藤先輩は華やかなプレイヤーだね。目立つ」
「そ、オフェンスね。絶対に点を取ってくれる」
「槇野くんは……」
「課題が見えたと思うよ、槇野も」

 うん、そうだね。熱のある瞳は全然光を失ってない。むしろ……前よりも熱い。