嬉しい、寂しい。山地くんはあっさり気持ちを表現してくれた。そうなのだと思う。

「また明日……か」山地くんが遠く小さくなっていくのを見届けて、(山地くん、漕ぐの早いな)私とカケルも歩きだした。

 山地くんと槇野くんじゃ『また明日』の意味合いが微妙に違う気がした。

 カケルが昨日と同じように昨日と同じ場所をくんくんするのを見て、毎日同じとこばっかり……と思うけれどカケルにとったら意味があるのだろう。

 毎日同じように変化のない生活を送っているけれど、私にも意味があるのかな……

「カケル、そろそろおばあちゃんの腰も治るのかな?」

 聞いてみたけれど、カケルはくんくんすることに夢中で聞こえていない。
聞こえても無視してるのかもしれないけど。

 カケルを祖母の家へ送り届けると、自転車置き場へ向かった。前後、どちらのタイヤにも空気を入れて、ギィギィなっていた部分にも錆止めスプレーして油を差した。

 これでよし!試しに少し走ってみる。いい感じだ。自転車がギィギィ鳴ったくらいで憂鬱になったのだから、自転車がギィギィ鳴らなくなったくらいでハッピーにはなれないものかと思ったけれど、どうやらそれは無理なようだ。

「ただいま」
「はい、ご苦労様」
「うん、今日の晩ごはん何?」
「メンチカツ。……お肉たっぷりの」

 ……。
 そうか、お腹に重そうだなと思ったけれど「楽しみ」と伝えた。母は上機嫌で、キッチンから鼻歌が聞こえて来た。すぐに油の匂いが部屋まで届いてきて、また少し憂鬱になってしまった。