君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

『あー、だるい。新入生代表の挨拶とか、昨日の夜中に思い出して慌てて考えたけど……まあ、ノリでいけるか』

「……え?」

思わず顔を上げた。今の声――。翼の心の声?そっと翼の後ろへ近づいてみる。やっぱり、気づいていない。ということは……。私には、翼の心の声が聞こえている?


『綺麗な子だなー。桜の妖精がいるのかと思った。栗色の髪がふわふわしてて……あ、同じ制服だし同級生かな?だけどそれにしても……』

思わず自分の顔に触れる。……私の第一印象、それだったの?
なんだか複雑。というか、桜の妖精ってなに。

『顔真っ青じゃん…具合悪いのか?』

翼の視線が、桜の木の下に立つ私――いや、昔の私へ向けられる。

『なんか、ほっとけないな』

その声が、少しだけ真剣になる。

『ってか、このまま素通りしてあとで倒れてたらなんか後味悪すぎるし。まだ時間もあるし……よし、声かけるか』

翼が、ゆっくりと歩き出す。昔の私のほうへ。私は、その背中を見つめた。

「やっぱり、優しいな」

小さく呟く。初対面だった私を心配して。自分から声をかけようとしてくれている。胸の奥が、少しだけ温かくなった。