君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

「僕、入学して割とすぐに、アイドルのカード落としたじゃん」

「あ、うん」

「あのとき、引かれるかもって思って。妹のだって誤魔化そうか、必死に考えてて」

たしか、あのときの森山君は無表情だった。

「妹、いたっけ?」

私が聞くと、

「いないけど」

「……ふふっ」

思わず笑ってる。

「でも、ただ拾ってくれて。あのときはほんと助かった……」

森山君は、相変わらず無表情のまま言った。

「だから、そういうところだよ」

「え? どういうこと?」

私は首を傾げる。

「優しいところ。偏見とかないでしょ」

「偏見?」

「僕がアイドル好きで、カード集めてて、週末には握手会まで行ってるって言ったって」

「うん」

私は頷く。

「好きなものは人それぞれだし。個性だと思ってるから」

「そういうところ」

森山君が、少しだけ目を細めた。

「まあ、みんなの前ではクールぶって、ガリ勉装ってるけどね」

そう言って、遠くを見つめる。私は思わず笑った。

「森山君って、意外と愉快な人だよね」

「ありがとう」

一瞬だけ、森山君の口元が緩んだ。

「あ、それより。この前、図書館に入った新作見た?」

「あ、見た見た!」

「やっぱり? あれ、結構よかったよね」

「うん。私、最後のところ好きだった」

そんなふうに、他愛もない話をしていた。――そうだった。森山君とも、こんな会話をしていたんだ。私はふと、校庭の向こうを見る。輪の中にいる翼。

「……あ」

思わず立ち上がった。そうだ。私、翼のところに行ってみよう。せっかく絵の中に入ってるのに。