君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

すっかり美術館に通いつめている私。

「いらっしゃい」

美術館に入ると、雪じいがいつものように優しく迎えてくれた。

「こんにちは」

私は軽く頭を下げ、奥へ進む。そして――。次の絵の前で、足を止めた。

「これ、学校の校庭?」

広い校庭。白い線がいくつも引かれている。体育祭の準備だろうか。そう思った瞬間――。スッ。白い線が、まるで生き物みたいに私の足元へ向かって伸びてきた。

「わ……」

思わず目を閉じる。そして、ゆっくりと目を開けると――。

「はあ……僕、体育祭とかほんと嫌いなんだよね」

「……?」

聞き覚えのある声…隣を見る。眼鏡をかけた大人っぽい男の子。森山君だ。

「こんなの、運動できる人たちのためのイベントじゃん」

「……わかる。私も」

思わず隣で頷いている。

「だって、運動できないやつにしたら、地獄イベントでしかないよ。みんなに注目されながら走るなんて……」

森山君は、うんざりしたようにため息をついた。

「しかも遅くて、応援されるのも嫌だ」

「……すごいわかる」

私も深く頷く。――そうだった。この頃の私は、体育祭が大嫌いだった。今もだけれど。運動が苦手で、人前に出るのも苦手。できれば、ひっそり終わってほしいと思っていた。ふと、校庭の向こうを見る。そこには、何人かの生徒が集まっていた。

「あ……」

翼たちだ。その中の翼が、こちらを見た。目が合い、大きく手を振ってくれている。そんな翼に私は、ほんの少しだけ笑って。小さく手を振った。すると翼も、こちらを見ながら笑っている。