君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

「まあ、ようは考えようだよな」

翼が穏やかに笑う。

「ほら、雨が降ってたらじめじめして暗い気持ちになるって思えば、そうなるし」

「うん」

「蒼井が前に言ってたみたいに、自分の代わりに泣いてくれてるみたいで、なんだかスッキリするって思えば…雨もいいなって思えるし」

翼はゆっくりと、しだれ柳を見上げた。

「どう捉えるかだよ」

夕暮れの光が、しだれ柳の細い枝に溶けていく。風に揺れるその姿が、さっきまでとは違って見えた。

「確かに、そうだね。これって、何色なんだろう」

私は、ステンドグラス風のしおりでしだれ柳を覗き込む。夕暮れの光を浴びたしだれ柳が、細い枝や葉まで琥珀色に染まっている。淡い橙色に、少しだけ赤が混ざっていて――なんだか、現実じゃないみたいに幻想的だった。

「黄昏色、とか?」

翼が口を開く。

「黄昏?」

「うん。黄昏っていうのは、夕暮れのこと。空や景色が、淡い黄色からオレンジ、赤みがかった紫色に染まっていく時間」

「へぇ…」

「それにさ、昔は日が暮れて周りが薄暗くなると、向かいにいる人の顔も見分けにくくなったんだって」

「そうなの?」

「うん。それで『誰ぞ彼』っていう言葉があるんだよ。『あなたは誰ですか?』って尋ねるくらい、隣にいる人でさえ違う人に見える時間ってこと」

「…怖いんだけど」

思わずそう言うと、翼がクスッと笑った。そして、過去の私の手をぎゅっと握る。

「大丈夫だよ。俺、目いいから。ちゃんと見分けられる」

「…ほんと?」

「ほんと、ほんと」

そう言って笑う翼につられて、私も笑った。夕暮れの光が、しだれ柳を黄昏色に染めているのをみつめる。