君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

翼がゆっくりと私を見つめた。

「少し散歩しない?」

『まだ、一緒にいたい』

「う、うん。いいよ」

「よし」

翼が嬉しそうに笑う。二人で家を出て、夕暮れの道を並んで歩き出した。しばらく歩くと、川が見えてくる。その川沿いに、大きく枝を垂らした木が立っていた。

「あ、しだれ柳だ」

翼が指をさす。風が吹くたび、細長い枝がさらさらと揺れている。

「…私、ちょっと苦手」

「え?」

「なんか…不気味な気がする」

そう言うと、翼が柔らかく笑った。

『確かに…蒼井って、ちょっとビビりだよな。学校で先生が勢いよく扉を開けたときとか、クラスのやつらとやってた黒ひげ危機一発でも、肩がびくってなってたし』

…バレてたのか。私が小心者だってこと。

「しだれ柳ってさ。夜風に揺れる細長い枝が、人の姿とか幽霊の髪や腕みたいに見えるって言われることもあるんだよ」

翼が揺れる枝を見上げる。

「それに、水辺や墓地みたいな場所に生えることから、昔は『異界との境界』なんて考えられることもあったらしい」

「そうなんだ…」

やっぱり、ちょっと怖い。

「でも、俺は割と好き」

「え?」

翼は笑いながら、柳を見つめる。

「だって、この木のおかげで日陰ができて涼しいし」

翼は風に揺れる枝を目で追った。

「風が吹くと、あんなに激しく揺れるだろ?」

「うん」

「それでも折れずに、ちゃんと立ってる。生命力がすごいんだって」

「生命力?」

「うん。それに、春の芽吹きも早い。どの木よりも早く春を迎えるって言われてる」

「へえ…」

知らなかった。私はもう一度、しだれ柳を見上げる。夕暮れの光を受けた細い枝が、風に揺れていた。