君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

二人で、仏壇の前に並ぶ。そこには、優しく微笑むお母さんの写真が飾られていた。翼は写真をじっと見つめてから、ふっと笑う。

「綺麗なお母さんだね。蒼井は、お母さん似なんだな」

「そうかな」

「うん」

そう言って、翼は優しく笑った。そして、写真に向かってそっと手を合わせる。

『初めまして。時宮翼です。蒼井さんと、最近お付き合いを始めました。よろしくお願いします』

胸が、ぎゅっと締めつけられた。こんなふうに…。ちゃんと伝えてくれてたんだ。お母さんに、私と付き合っているって。私は写真を見つめる。優しく笑ってる。

「小学四年生のころね。私が食べたいって言ったプリンを、お母さんが買いに行ってくれたの」

「うん」

「その帰りに、交通事故で亡くなったの」

翼の表情が、静かに変わる。

「突然のことで、すごくびっくりして…。私のせいだって思った。私がわがままを言わなければ、お母さんは出かけなかったんじゃないかって」

自分の声が、少しだけ震えた。

「なんとなく、それから上手く笑えなくなって。もともと喜怒哀楽が薄いほうだったんだけど…」

一度、言葉を止める。

「笑ってもいいのか、どうやって笑えばいいのか、わからなくなって…」

それでも。

「でもね」

私は翼を見る。

「時宮くんに会ってから、私…たぶん、今までで一番笑えてる気がする」

「それ、本当?」

翼が真剣な顔で私を見つめる。

『だったら…嬉しい。俺だって、そうだから』

その心の声を聞いた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなった。私は頷いてそして――笑った。お母さんの写真の前で。