君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

二人で玄関へ向かう。靴を履き終えた翼が、振り返った。

「蒼井…今日はありがとう」

「うん。また学校で」

そう言って、私は玄関で翼を見送ろうとした。けれど――。

『やっぱり…気になる』

翼が、ふとリビングのほうを見る。

『前は聞かないでいたけど…ちゃんと挨拶したいし』

「蒼井」

「ん?」

「挨拶してもいい?」

「え?」

翼が少しだけ言いにくそうに続ける。

「リビングのドアから、仏壇の写真が見えて…。あれ、もしかして…蒼井のお母さん?」

「あ…うん」

私は小さく頷いた。

「時宮くんには、話したいなって思ってたから」

そう言って、控えめに笑う。これは、本当の気持ちだった。翼には、ちゃんと伝えたかった。私のお母さんのこと。大切な人がいなくなったことも。――先に言わせてしまったけれど。

「こっち、来てくれるかな」

「うん」

翼は静かに頷いた。二人でリビングへ向かう。その背中を見ながら、私はそっと息を吐いた。