君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

「俺、バイキングとか絶対下見してから選ぶよ」

「そうなの?」

「そうそう! だって、いろんな種類食べたいしさ」

翼が楽しそうに笑う。その笑顔につられて、私も小さく笑った。意外と、ちゃんと考えている。そのことに気づいたのは、付き合ってしばらく経ってからだった。私はまだ、翼のことを何も知らなかったんだ。……こんなに近くにいたのに。そのとき――。

「きゃっ」

人の波に押されて、私は誰かにぶつかった。

「危ねっ。大丈夫?」

「うん。大丈夫」

「そっか」

翼がほっとしたように息を吐く。すると――。

『手、繋いでいいかな』

翼の心の声が聞こえた。

『はぐれたら心配だし……というか、繋ぎたい』

「……」

思わず翼を見る。すると、翼は何事もなかったような顔で、私に手を差し出した。

「はい」

「……えっと」

突然のことに戸惑う。すると翼は、少しだけ照れたように笑った。

「はぐれたら危ないし。あと……下駄だと転びそうだから」

『いや。そこは普通に、手繋ぎたいって言えばいいじゃんか、俺』

スマートに手を差し出しているのに。その頭の中では、そんなことを考えていたんだ。なんだか、おかしい。昔の私は恐る恐る、自分の手を差し出した。その瞬間――。ぎゅっ。翼の手が、私の手を力強く握った。
驚いて顔を上げてる。翼は前を向いたまま。でも、その耳がほんの少し赤くなっていた。