君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

その後、三人で呆然としたまま駅まで歩いた。何を話したのか、もう何も覚えていない。ただ、駅で梓と長谷くんと別れた。

「じゃあね」

そう言ったのかもしれない。でも、自分が何を口にしたのかさえ、よくわからなかった。家に帰らなきゃ。そう思っていたはずなのに――。足は、駅とは反対の方向へ向かっていた。ただ、気づけば私は――月影美術館へ向かっていた。

「私、何してるんだろう」

もう、閉まっているはずなのに。当然、館内には誰もいない。入口から差し込むわずかな明かりを頼りに、暗い館内を見つめる。帰ろう。そう思ったのに――。足が動かなかった。そのとき。

「あれ、お嬢さん。どうした?」

背後から声がした。振り返ると、そこには雪じいが立っていた。

「雪じい…」

「こんなところで立ってないで、入りなさい」

「ありがとうございます。あの……絵、見てもいいですか?」

そう尋ねると、雪じいは何も聞かずに、優しく頷いた。

「もちろんじゃ」

「ありがとうございます」

私は美術館の中へ入る。カラン、カラン。下駄の音が、静まり返った館内に響いた。昼間とは違う、少しだけ不思議な空気。私は、絵の前へ向かう。そして――。

「あ…」

そこに描かれていたのは、星空を見上げる二人の後ろ姿だった。少年と、浴衣姿の少女。けれど、二人の距離は少しだけ遠い。まるで、触れようとしても届かないみたいに。そのとき。キラリ。絵の中で、一筋の星が流れた。ゆっくりと、目を閉じる。
――そして。目を開けると。カラン、カラン。下駄の音。聞こえてくるのは、屋台の呼び声。笑い声。夜空を彩る、提灯の明かり。

「…お祭り?」

思わず辺りを見回す。さっきまで私がいた夏祭りと、よく似ている。