君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

透明なガラスでできたような建物。小さくてこぢんまりとしているのに、どこか幻想的だった。中には、いくつもの絵が飾られている。

「おや、お客さんかな」

部屋の奥から突然、声がした。そこには八十代くらいのおじいさんが立っていた。真っ白な髪に、穏やかな笑顔。

「す、すみません。勝手に入ってしまって」

私は慌てて頭を下げた。

「気にせんでいい。せっかくだ。よかったら、ゆっくり見ていってくれ」

「ありがとうございます」

もう一度頭を下げて、私は歩き出した。館内には、私しかいない。コツ、コツ、と自分の足音だけが静かに響いている。なのに、不思議と居心地がよかった。窓から差し込む光が床に淡く落ちていて、空気まできらきらしているように見える。私は、一枚ずつ絵を眺めながら歩いた。正直、美術のことはよくわからない。何を描いているのか、どんな技法を使っているのかなんて、さっぱりだ。
それでも――。

「……きれい」

思わず、声がこぼれた。