君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

カラン、カラン。下駄の音が、夜の道に軽やかに響く。屋台から漂ってくる甘い香り。焼きそばのソースの匂いに、りんご飴の赤。あちこちから聞こえてくる笑い声。お祭りに来ているみんなが、どこか浮かれているように見えた。

「…あ」

隣を歩いていた梓が、ふいに足を止める。

「長谷恭弥」

「え?」

梓の視線を追う。そこにいたのは――長谷くんだった。翼と仲のよかった男子。けれど、翼の姿はない。長谷くんの周りには、浴衣姿の男女が何人か集まっている。みんな楽しそうに笑っていた。すると、長谷くんがこちらに気づく。その顔が、一瞬だけ強張った。

「蒼井さんと金田さん」

「久しぶり、長谷恭弥」

「まさかのフルネーム」

ふっと軽く笑うけどどこかぎこちない。

「ってか……」

梓が長谷くんをじろりと睨む。

「あいつは一緒じゃないの? ほら、時宮」

その言葉に、肩がビクッと揺れた。長谷くんの顔から、笑顔が消える。

「あー…翼?」

少し間を置いて、無理やり笑った。

「翼なら、海外留学行ってるよ」

「…え?」

思わず声が漏れる。

「父親が学者らしくてさ。一緒に勉強してるんだって。すげーよな」

長谷くんは笑っている。けれど――その目は、まったく笑っていなかった。