夏休みの間、私は何度もあの美術館へ通っていた。絵の中で聞いた、翼の心の声。何度思い返しても、胸の奥がぎゅっとなる。そんなある日、梓から連絡がきた。
『夏祭り、一緒に行こう。あんな男のことなんて、忘れちゃいなよ』
そう言われても、すぐには頷けなかった。けれど、断りきれないまま、私は梓の家へ連れてこられていた。
「ほら、腕上げて」
「え、ちょっと待って。自分で着られるから……」
「ダメ。絶対ぐちゃぐちゃになるでしょ」
梓に手際よく浴衣を着せてもらう。鏡を見ると、淡いピンク色の浴衣を着た自分が映っていた。
「なんか、変」
「全然。かわいいじゃん」
「そうかな」
「そうだよ。ほら、行こ!」
梓に手を引かれて、私は夏祭りの会場へ向かった。
「久しぶり。ってか、大丈夫? 今まで何してたの?」
紺色の浴衣に身を包んだ梓が、隣を歩きながら尋ねてくる。
「美術館に行ってたよ」
「美術館?」
「うん」
「そうなんだ。てっきり、ずっと家に閉じこもってるのかと思って、心配してた」
「ごめんね。心配かけて」
「気にしないでよ」
梓は笑って、私の肩を軽く叩いた。
「友達でしょ?」
「うん」
その言葉が、胸にじんわり染みていく。
「それにさ」
梓が、少しだけ眉を寄せる。
「あいつ見かけたら、私が殴ってやるから」
「ふふ」
思わず苦笑してしまう。
「梓、怖いよ」
「だって、あんなに辛い思いしたんだよ?許せるわけないじゃん」
「もう、いいんだ」
そう言いながら、私は笑った。本当に、もういい。そう思いたかった。けれど――。胸の奥にはまだ、あの日の痛みが残っている。
『夏祭り、一緒に行こう。あんな男のことなんて、忘れちゃいなよ』
そう言われても、すぐには頷けなかった。けれど、断りきれないまま、私は梓の家へ連れてこられていた。
「ほら、腕上げて」
「え、ちょっと待って。自分で着られるから……」
「ダメ。絶対ぐちゃぐちゃになるでしょ」
梓に手際よく浴衣を着せてもらう。鏡を見ると、淡いピンク色の浴衣を着た自分が映っていた。
「なんか、変」
「全然。かわいいじゃん」
「そうかな」
「そうだよ。ほら、行こ!」
梓に手を引かれて、私は夏祭りの会場へ向かった。
「久しぶり。ってか、大丈夫? 今まで何してたの?」
紺色の浴衣に身を包んだ梓が、隣を歩きながら尋ねてくる。
「美術館に行ってたよ」
「美術館?」
「うん」
「そうなんだ。てっきり、ずっと家に閉じこもってるのかと思って、心配してた」
「ごめんね。心配かけて」
「気にしないでよ」
梓は笑って、私の肩を軽く叩いた。
「友達でしょ?」
「うん」
その言葉が、胸にじんわり染みていく。
「それにさ」
梓が、少しだけ眉を寄せる。
「あいつ見かけたら、私が殴ってやるから」
「ふふ」
思わず苦笑してしまう。
「梓、怖いよ」
「だって、あんなに辛い思いしたんだよ?許せるわけないじゃん」
「もう、いいんだ」
そう言いながら、私は笑った。本当に、もういい。そう思いたかった。けれど――。胸の奥にはまだ、あの日の痛みが残っている。



