君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

「…だめだ。ちょっと外でよう」

私は立ち上がった。ショートパンツにTシャツ。キャップをかぶり、カバンを手に取る。このまま家にいたら、また翼のことばかり考えてしまいそうだった。外に出ると、むわっとした熱気が肌にまとわりつく。

「暑い」

どこか涼しくて、時間を潰せるところ。できれば――知り合いの誰もいない場所がいい。そんなことを考えながら、あてもなく歩いていた。そして、ふと。私は足を止めた。

「……美術館?」

目の前に、見慣れない建物があった。透明なショウウィンドウの向こうに、小さな文字が浮かんでいる。

『月影美術館』

……こんなところに、美術館なんてあったっけ?昨日までなら、きっと気にも留めなかった。なのに今日は。なぜか、その名前から目を離せなかった。吸い寄せられるように、足が動く。

「…入ってみようかな」

入り口には、小さく『OPEN』の文字。私は少しだけ迷ってから、扉に手をかけた。

「失礼します」

カラン、と小さなベルが鳴る。扉を開けた瞬間――。私は、ぴたりと足を止めた。