君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

傘を返しにやってきた。そんな口実で、私はまた美術館へ足を踏み入れる。

「こんにちは」

「いらっしゃい」

雪じいが、いつものように柔らかな笑顔を向けてくれた。

「傘、ありがとうございました」

「ちゃんと返しにきてくれてえらいなぁ」

「ふふ」

私は小さく笑って、さっそく足を進める。そして――続きから。絵の前で足を止めた。学校のプールが描かれている。たくさんの生徒たちがいて、プールサイドには緑色の苔がこびりついている。
だけど。その中にひとりだけ、目を引く少年がいた。少年が見つめているのは――ひとりの少女。少女は、その視線に気づいていない。

「……」

なんだろう。そう思った瞬間。――バシャン!

「きゃっ!」

突然、水しぶきが飛んできた。思わず目を閉じる。冷たい。頬についた水滴をぬぐって、ゆっくりと目を開ける。そこにあったのは――さっきまでの美術館ではなかった。

「えー、プール清掃の時期になって、うちのクラスが担当になった」

黒板の前に立っているのは、宮内先生。教室には、見慣れた制服姿の生徒たちが並んでいる。

「十数名、有志を募ります。プールの中は専門の業者が入っているから、やるのはプールサイドの掃除。それから、物品の確認と更衣室の掃除だ」

教室のあちこちから、

「めんどくさーい」
「誰かやる?」

なんて声が上がる。