私と別れてから翼は学校を休むことが増えていった。家の事情で、海外に留学するらしい。そんな話も、時々耳にした。翼のお父さんは、偉い学者さんらしい。
何度かメールしてみたけど返事は返ってこなかった。それもそうだよね。きっと私は翼に嫌われたんだ。
中学二年生になると、私と翼は別のクラスになった。少しずつ、翼が遠くなっていくような気がした。
そして、夏休みに入った。でも、何をしても心が満たされなかった。
新しい環境が苦手な私にとって、小学校からずっと一緒にいてくれた親友の金田梓(かねだ あずさ)。そんな梓が、夏休みに入ってからも何かと私に声をかけてくれていた。
だけど――。
テレビをつけても、本を読んでも。ふとした瞬間に、思ってしまう。――隣にいるはずだった翼は、もういない。宿題をやろうと机に向かった。ノートを開いて、シャーペンを握る。けれど、一問も進まない。気づけば頬杖をついたまま、ぼんやりと窓の外を眺めていた。蝉の声が、やけにうるさい。夏って、こんなに暑かっただろうか。こんなに――静かだっただろうか。
「……ダメだ」
ぽつりと呟く。しんどい。苦しい。悲しい。――もう、消えてしまいたい。そんなことを考えてしまった自分が怖くなって、私は慌てて首を横に振った。そして、ふと鏡を見る。額が見える、胸元まで伸びた栗色の髪。
「……髪、切ろうかな」
なんとなく、そんな言葉が口からこぼれた。失恋したら髪を切る――なんて、今どき古いかな。そう思って、少しだけ笑う。この髪は長いから、手入れも大変だった。毎日トリートメントをして、乾かすのにも時間がかかる。それでも、ずっと伸ばしていた。だって――。
「…長いの、好きって言ってたな」
毛先を指先でつまむ。その瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。もう別れたのに。振られたのに。どうして私は、まだ翼の好きなものを気にしているんだろう。髪を切ることすら、翼のことを考えてしまう。
「……バカみたい」
小さく笑ってみる。けれど――。目の奥が、また熱くなった。慌てて顔を伏せる。髪を切れば、何かが変わると思った。翼のことを忘れられると思った。でもハナミを持つ手が震えてそっとおいた。
何度かメールしてみたけど返事は返ってこなかった。それもそうだよね。きっと私は翼に嫌われたんだ。
中学二年生になると、私と翼は別のクラスになった。少しずつ、翼が遠くなっていくような気がした。
そして、夏休みに入った。でも、何をしても心が満たされなかった。
新しい環境が苦手な私にとって、小学校からずっと一緒にいてくれた親友の金田梓(かねだ あずさ)。そんな梓が、夏休みに入ってからも何かと私に声をかけてくれていた。
だけど――。
テレビをつけても、本を読んでも。ふとした瞬間に、思ってしまう。――隣にいるはずだった翼は、もういない。宿題をやろうと机に向かった。ノートを開いて、シャーペンを握る。けれど、一問も進まない。気づけば頬杖をついたまま、ぼんやりと窓の外を眺めていた。蝉の声が、やけにうるさい。夏って、こんなに暑かっただろうか。こんなに――静かだっただろうか。
「……ダメだ」
ぽつりと呟く。しんどい。苦しい。悲しい。――もう、消えてしまいたい。そんなことを考えてしまった自分が怖くなって、私は慌てて首を横に振った。そして、ふと鏡を見る。額が見える、胸元まで伸びた栗色の髪。
「……髪、切ろうかな」
なんとなく、そんな言葉が口からこぼれた。失恋したら髪を切る――なんて、今どき古いかな。そう思って、少しだけ笑う。この髪は長いから、手入れも大変だった。毎日トリートメントをして、乾かすのにも時間がかかる。それでも、ずっと伸ばしていた。だって――。
「…長いの、好きって言ってたな」
毛先を指先でつまむ。その瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。もう別れたのに。振られたのに。どうして私は、まだ翼の好きなものを気にしているんだろう。髪を切ることすら、翼のことを考えてしまう。
「……バカみたい」
小さく笑ってみる。けれど――。目の奥が、また熱くなった。慌てて顔を伏せる。髪を切れば、何かが変わると思った。翼のことを忘れられると思った。でもハナミを持つ手が震えてそっとおいた。



