君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

田中君に話しかけられている間に翼は帰ってしまったようで、思わず自分についてきてしまった。私はというと本を棚に戻したり、机を整えたり、淡々と業務をこなしている。それから帰ろうとした、そのとき。

「……天気に裏切られた……」

ゴロゴロゴロ……。遠くで雷が鳴った。窓の外を見ると、さっきまで晴れていたはずの空が真っ黒になっている。そして――。ザーッ!

「うそ……」

土砂降りの雨が、校庭を一気に白く染めていた。この日は傘、持ってなかったんだ。しばらく玄関で立ち尽くした私は仕方なく、教室へ戻っていった。そうだ…この日のこと私はちゃんと覚えている。廊下を歩いて、教室の扉を開けた私の後をついていく。すると――。

「あれ、蒼井。奇遇だね」

ひらりと手を振ったのは、翼だった。

「時宮くん、どうしたの?」

「忘れ物して」

そう言って、スマホを見せてくる。

「スマホ?」

「うん」

……でも。その直後。

『というのは、うそで』

翼の心の声が聞こえた。

『蒼井と図書委員のはずの田中が出てきたから、ちょっと気になったんだよなー』

……え?

『しれっと覗きに行ったら、めっちゃ集中してて声かけられなかったし』

思わず、口元が緩む。

『一緒に帰りたくて待ってたとは言わないでおこう』

ふふっ。そうなんだ。気にしてくれてたんだ。図書館に声をかけに来てくれてもよかったのに。全然、気づかなかった。窓の外では、まだ雨が激しく降り続いている。