「おーい、翼! 何番?」
声をかけたのは、長谷恭弥くん。明るい茶色の髪で、いつもキラキラした男女グループの中にいる。翼と一番仲のいい友達だ。
「お、いいじゃん。扉近いから、すぐトイレ行けるな」
「そんな、いつも切羽詰まってないから。お前、何番?」
「俺、十二番。窓側の一番後ろ~」
『うそだろ。マジか』
翼が、ちらっと私の席を見る。そして――。
「交換して」
「は? なんで?」
「なんでも」
翼は即答した。長谷くんが、翼の視線を追う。そして、窓側の一番後ろへ机を運んでいる私を見つけた。長谷くんの口元が、にやりと上がる。
「ははーん?そういうこと?」
「そういうこと。マジ頼む」
翼が小さな声で答える。
「はいはい。しょうがねーな」
長谷くんが笑いながら、自分のくじを翼へ差し出した。
「貸しひとつな」
「サンキュ!」
翼が嬉しそうに笑った。私はそのやり取りを、ただ見つめていた。翼は私の隣に座りたかったの?



