君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

外に出ると、すっかり空が暗くなっていた。

「雪じい、ありがとうございました。また来てもいいですか?」

振り返ると、雪じいが優しく笑っている。

「もちろんだとも。またおいで」

「はい」

私はぺこりと頭を下げて、美術館をあとにした。帰り道。ふと、あの公園に寄ってみた。

「……そういえば」

翼がときどき送ってくれていた写真。葉っぱの色が変わったとか、今日はこんな色だったとか。あの写真は――。

「ここの公園だったんだ」

木々を見上げる。五月に見たときとは、葉っぱの色がまるで違う。夏の葉は、深く濃い緑色。長く伸びた影が重なって、ところどころ黒く見える。春の若葉のような柔らかさは、もうない。力強く茂った葉からは、夏そのものの重さを感じる。私はポケットから、ステンドグラス風のしおりを取り出した。そっと空にかざしてみる。深い緑の葉が、しおりの中で違う色に染まって見えた。

「…これ、何色っていうのかな」

答えてくれる人はいない。それなのに――。胸の奥が、じんわりとあたたかくなった。翼が見ていた景色。翼が「きれい」だと思って、私に教えてくれた色。それを今、私も見ている。

「……不思議」

小さく呟いて、私はもう一度、葉っぱを見上げた。