君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

ふと、隣にいる翼を見る。…すごい見てる。私の背中を、じっと。

「……」

猫背だから?なんか変なところでもあったかな。少し気になっていると――。

『もっと知りたいな。蒼井のこと』

「……え?」

思わず翼を見る。

『そうだ。葉っぱの色、写真に撮っておこう』

翼がスマホを取り出す。

『これたまに撮って、連絡したらうざいかな?でも、葉っぱの色きれいって言ってたし』

翼は少し迷ってから、スマホを空へ向ける。

『とりあえず、一枚』

パシャリ。シャッター音が響いた、その瞬間――。

「……!」

身体が、後ろへ引っ張られるような感覚に襲われた。

「なに……これ……!」

ふわっ、と強い風が吹く。目を開けていられない。風の向こうで、翼が遠ざかっていく。私は必死に目を閉じた。そして――。ふっと、風が止んだ。そっと目を開ける。

「戻ってきた……」

そこは、月影美術館だ。私は、さっきの絵の前に立っている。

「…絵は」

目の前の新緑の景色を見つめる。すると――。

「若葉色が……」

淡い黄緑色だった葉が、少し濃くなっている。

「萌黄色になってる」

まるで、季節が少し進んだみたい。濃くなった緑を見ていると、なんだか胸の奥があたたかくなる。宿題をポストに入れず私に会えるまでずっと待っていてくれたこと。翼が私のために書いてくれた数学の問題のヒント。あんなにドキドキしながら連絡先を聞いてくれたこと。そして――。

『もっと知りたいな。蒼井のこと』

その言葉が頭から離れない。

「どうして…」

私は絵を見つめる。

「どうして、私のことを知りたいって思ってくれたんだろう」

その答えを――。私は、まだ知らない。