君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

ぐっと腕を振り払われた。

「っ」

その勢いに、私はよろめく。ショックだった。

「もう無理だから」

翼が、淡々と言う。そして――。

「はじめから、別に好きじゃなかった」

「……え?」

頭の中が真っ白になった。そんな……。そんなのって。指先が震える。

「じゃあ」

それだけ言うと、翼は歩き出した。私は何も言えないまま、その場に立ち尽くした。

中学一年が終わる三月。蒼井望叶(あおい もか)、大失恋をした。
時宮翼(ときみや つばさ)。明るくて爽やかで、みんなから人気者だった。そんな彼が、私と付き合ってくれたこと自体、今思えば不思議なことだったのかもしれない。

中学一年の春、同じクラスになった。席が隣だったことがきっかけで、自然と話すようになった。
翼は頭がよくて、いつもふざけているように見えるのに、授業が始まると真剣だった。私がわからない問題があると教えてくれた。
授業中、ときどき小さく折ったメモを飛ばしてきて――。

『今日の放課後、暇?』

そんな何気ないやりとりが、いつの間にか特別になっていた。そして、私たちは付き合い始めた。
手をつないで歩いた。一緒に遊びに行った。くだらないことで笑った。全部、楽しかった。私は、本当に幸せだった。それなのに――。突然の別れ。

『……はじめから、好きじゃなかった』

あの言葉だけが、何度も頭の中で繰り返される。じゃあ。今までの時間は、全部嘘だったの?胸の奥が、ずきんと痛んだ。