君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

机の上には、宿題のプリントとは別に、もう一枚の紙が置かれていた。そこには、綺麗な文字で数学の公式やヒントが書かれている。答えは書いていない。

「……」

しばらく、その紙を見つめる。

「……待って」

これ――。翼が書いてくれたの?てっきり、宿題のプリントと一緒に、みんながもらっているものだと思っていた。「数学の菅原先生にしては、ずいぶん丁寧だな」なんて、思ってたのに。まさか。翼が私のために…?

「うわあ…」

胸がいっぱいになる。

「そんなの……ずるいよ」

こんなのを見せられたら。今まで知らなかった翼の優しさを、こんなにもたくさん見つけてしまったら。……好きだったことも忘れる事も出来なくなる。

「よしー、できたー」

翼が大きく伸びをする。

「風呂入ってこよ」

そう言って、部屋の扉へ向かって歩き出した。カチャ。扉が開く。その瞬間――。ふわっ。どこからか、風が吹き込んできた。

「……え?」

風が私の頬を撫でる。その風に乗って、緑色の葉がひらりと舞った。

「葉っぱ……?」

目の前が、淡い緑色に染まっていく。私は思わず目を閉じた。
そして――。そっと目を開ける。

「……あれ?」

そこは、さっきまでいた翼の部屋ではなかった。見覚えのある景色。

「……ここは」

私の家の近くの近所の公園だ。五月の新緑が、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。