君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

翼のあとをついていく。そして――。

「…ここ」

そこは、私の家の前だった。翼がインターホンを押す。ピンポーン。しばらく待ってみるけれど、誰も出てこない。

『いなそうだな……』

翼はポストを見た。

『うーん。少し待ってるか』

「え?」

思わず声が出る。先生、ポストに入れていいって言ってたじゃん。なのに翼は、家の前を離れていった。どこへ行くのかと思えば、近くの公園。木陰になっているベンチに腰を下ろした。
サワサワ……。風が吹いて頭上の木々が揺れる。

『ちょうど日陰だ。暇だし…宿題、さっさと終わらせよ』

翼はカバンから宿題を取り出した。

「……解くの、早……」

翼の宿題を覗き込むと問題を次々と解いていく。その速さに呆気にとられていると――。一時間。二時間。

「……」

もう二時間も経っている。なのに、翼はまだ帰らない。

「いつまでいる気なんだろう……」

この日は、お母さんの命日だった。私は学校を休んで、お母さんの実家へ行っていた。お墓参りをしたり、おばあちゃんと話をしたりして――家に帰る時間は遅くなっていた。
そんなことを、翼は知らない。ただ、私が帰ってくるのを待っている。やがて、空が少しずつ夕暮れ色に染まりはじめた。翼が時計を見る。

『さすがに遅いか……』

そして、宿題をカバンにしまった。

『また明日、こよう』

「……え?」

思わず目を見開く。まさか――。明日も来るの?翼は立ち上がると、何事もなかったように公園をあとにした。私は、その背中を見つめる。……知らなかった。こんなにも長い時間、私を待ってくれていたなんて。