君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

ふっと、桜が吹雪いた。二人の後ろ姿を見つめていた私の体を、桜吹雪が包み込んでいく。

「…え?」

思わず目を閉じる。そして――。ゆっくりと目を開けた。

「…あれ?」

そこには、見慣れた美術館の景色が広がっていた。私は、さっきまで見ていた桜の絵の前に立っている。

「戻ってきた?」

さっきのことは、夢だったのかな。そう思いながら、もう一度ゆっくりと絵を見つめる。何かがおかしい。

「……笑ってる」

桜の木の下に立っていた少女。さっきまで、青白い顔で強張った表情をしていたはずなのに。今の絵の中の少女は――。ほんのりと頬をピンク色に染めて、柔らかく笑っていた。まるで、何か嬉しいことがあったみたいに。

「……なんで?」

私が見たのは、ただの過去の出来事だったはずなのに。どうして絵が変わっているの?

「どうかしたかい?」

「…!」

突然、後ろから声がして驚いて振り向く。そこには、あのおじいさんが立っていた。

「あ、いえ…」

私は慌てて絵から視線を外して窓の外を見る。さっきまで差し込んでいた夕暮れの光は、いつの間にか消えていた。館内にも、夜の気配が静かに忍び込んでいる。

「…もう、こんな時間」