君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

「望叶…愛してる」

翼が優しく笑う。

「出会えてよかった。最後に話せて…よかった」

「そんな…お別れの言葉、嫌だよ」

涙がまた溢れる。翼は、そんな私の頬をそっと撫でた。細い指が、涙を拭っていく。

「最後に一つだけ、いい?」

「…な、なに?」

翼が、いたずらっぽく微笑んだ。

「望叶にしかできない、頼み事」

「…なんでも言って」

まっすぐに翼を見つめる。すると――。

「キスしていい?」

頬を赤らめながら、翼が私を見る。

「え!…う、うん」

思わず何度も頷いた。そっと、翼の手が私の頬に触れる。細い指。少し震えている。私も目を閉じた。唇が重なる。あたたかい。優しい。これが――翼との初めてのキス。もっと早く、こうしていればよかった。もっとたくさん、伝えていればよかった。そう思った瞬間。ふわり、と風が吹いた。目を開ける。

「…翼?」

翼の背中に羽が見えた。大きくて真っ白な。桜の花びらと一緒に、ふわりと羽が舞っている。

「…もう、お別れかな」

「いや!」

思わず手を握る。けれど、もう感触がない。

「望叶」

翼が、優しく笑った。

「ありがとう」

「私こそありがとう。ずっと忘れない。ずっと、翼を想ってる」

涙で、翼の顔がぼやける。その言葉を聞いて、翼は少し困ったように――でも、とても嬉しそうに笑った。そして、桜の花びらがふわりと舞い上がる。
白い羽が、花びらの中をゆっくりと空へ昇っていく。その向こうには、どこまでも続く青い空。舞い上がった桜の花びらが、光の雫のようにきらめいていた。白い羽の光と、桜と、涙に滲んだ青い空。

「桜雫色だね」

翼が楽しそうに笑った。その笑顔は――私が大好きだった、いつもの翼だった。最後まで、目を離したくなかった。けれど、涙が溢れて視界が滲んでいった。