君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

目を開ける。そこには、桜が舞っていた。――ここは。翼と初めて出会った、あの河川敷。けれど、何かが違う。私は、そこにいなかった。そして――。
少し離れたところに、一人の男の子が立っている。あれは、翼だ。でも、ずいぶん痩せていた。パジャマの上にカーディガンを羽織り、頭にはニット帽。頬は細くなっていて、あの頃の面影はほとんど残っていない。それでも。私には、ちゃんと翼に見えた。

「翼!」

私が叫ぶと、翼がゆっくりと振り向いた。

「…望叶?」

驚いたように目を見開く。

「なんで…」

声が届いた。それだけで胸がいっぱいになって、涙が溢れた。

「翼…ごめん」

「え…?」

「気づかなくて、ごめんなさい」

涙を拭っても、次から次へと溢れてくる。

「私ね、過去から来たの。翼の絵から……」

自分でも何を言っているのかわからない。それでも、伝えたかった。

「翼、ずるいよ。私に何も言わないで、いなくなるんだもん」

伝えたいことが、どんどん溢れてくる。

「私、翼のこと大好きなの」

翼の目が揺れた。

「入学式の日、不安だった私に声をかけてくれて……ありがとう」

一つずつ、思い出す。

「夏祭りに誘ってくれたことも……好きだって言ってくれたことも。すごく嬉しかった」

涙で視界が滲む。それでも、言葉を止めたくなかった。お母さんが亡くなってから。何を見ても、心が晴れなかった。それなのに。

「翼と出会ってから、景色が少しずつ色鮮やかに見えるようになったの」

私は涙を拭った。

「だから……」

少しだけ笑う。

「今度の夏はさ。プール行こうよ。ウォータースライダー、一緒にやろう。私、怖いけど……翼と一緒なら大丈夫だから」

「秋はさ、一緒に絵を描きたい。翼が絵を描いてるところ、見てみたい」

「冬は、またクリスマスマーケット行こうよ」

少しずつ、声が震えていく。

「あの透明なオーナメント……今度こそ買いたいな。だから、それまでにお金貯める」

そして――。

「春は……」

言葉が詰まる。舞い落ちる桜を見上げる。

「桜を見ようよ」

涙が頬を伝う。

「ここで、ずんだミルクティー。一緒に飲もうよ」

一つ言えば、また一つ。止めようとしても、言葉が溢れてくる。

「夏も秋も冬も…春も」

私は翼を見つめた。

「ずっと、翼と一緒がいい」

声が震える。

「だって私――」

涙がぽろぽろと落ちていく。

「まだ、翼とやりたいこと…いっぱいあるんだよ」

桜の花びらが、私たちの間をひらりと舞った。