君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

翼のあとを追うように、また私の視界が切り替わった。翼が訪れたのは――ここだった。月影美術館。雪じいのいる、この場所。

「雪じい。ちょっと部屋、借りていい?」

「おう。好きに使いなさい」

そう答えた雪じいが、翼の姿を見て目を細める。

「…随分と痩せたな」

「うん。髪もないし」

翼は、帽子をとって自分の頭を軽く触った。そして、いつものような調子で言う。

「もう死ぬんだ。だから遺書、書きにきた」

雪じいの顔が、苦しそうに歪む。

「しょうがないよ」

翼はそう言って、ふっと笑った。

「とりあえずさ。一人にして」

そう言うと、翼はスタスタと奥へ歩いていった。

『気持ち悪い……』

その瞬間、翼の心の声が聞こえた。

『薬のせいで頭はフラフラするし、足もおぼつかないし』

一歩、また一歩。まっすぐ歩いているように見える。でも――。

『最悪だ』

私は、何も言えなかった。翼は一人になった部屋で、キャンバスを取り出した。そして、震える手で鉛筆を握る。キャンバスに、ゆっくりと文字を書き始めた。