君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

「……嘘だろ」

翼が何も答えないことに、長谷くんの手からゆっくりと力が抜けていく。しばらく、誰も何も言わなかった。やがて長谷くんが、信じられないものを見るように翼を見つめる。

「蒼井さんには…言ってないのか?」

「言うつもりはない」

『これが、俺のけじめだ』

翼はまっすぐに長谷くんを見つめた。

「でも、お前…それでいいのか?」

長谷くんの声が震える。

「ちゃんと話さなくて。誤解されたままで…このままだと、お前が蒼井さんの中で嫌なやつになるんだぞ」

翼は何も答えない。

「大好きな人に、そう思われたままでいいのかよ!」

長谷くんが必死に声を絞り出す。

『嫌だ。そんなの、嫌に決まってる。大好きな望叶に嫌われたくない。できるなら、最後までそばにいたい。でも――俺がいなくなったあと、俺のことで泣くほうがもっと嫌なんだ』

「…いい」

翼が小さく息を吐く。

「これでいいんだ」

「お前…!」

長谷くんが声を荒らげる。

「なんでだよ! だったら俺が言う! 俺がお前のところに連れてくるから!」

その瞬間だった。翼が、がっと長谷くんの襟元を掴んだ。

「絶対にやめろ」

低く、押し殺した声。今まで聞いたことのないような、強い声だった。

「勝手なことしたら――」

翼の指に力がこもる。

「親友の恭弥でも、俺…一生許さない」

長谷くんが息を呑む。

「絶対に」

その言葉だけは、揺るがなかった。長谷くんはしばらく翼を見つめていたが、やがて悔しそうに目を伏せた。