君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

ぐっと、腕を振り払われた。

「…もう無理だから」

翼は、私を見ようとしない。

「はじめから、別に好きじゃなかった」

『嘘だ』

その言葉と同時に、翼の心の声が聞こえる。

『好きだった。初めて会ったときから、きっと。ずっと好きだ』

「……じゃあ」

私は、翼の顔を見つめた。涙を必死にこらえているような、苦しそうな顔。こんな翼を、私は知らなった。こんな思いを抱えて、私に別れを告げていたなんて。どうして、あのとき私はちゃんと理由を聞かなかったんだろう。もっと強引に聞けばよかった。もっと、翼のそばにいればよかった。そうしたら――。

『これでいい』

翼の心の声が聞こえる。

『これで、よかったんだ』

◇
場面が切り替わる。入院のための荷物をまとめ、玄関の扉を開けた翼。そこに立っていたのは――長谷くんだった。

「翼!」

「恭弥」

「何で連絡返さないんだよ! 最近、学校にも来ないし!」

長谷くんが、翼の肩を掴む。

「なんで蒼井さん振ったんだよ! 好きだったんだろ!? なあ!」

声を荒らげながら、翼の首元を掴むようにして詰め寄る。その瞬間、翼の顔が苦しそうに歪んだ。

「俺だって…俺だって、こんなことしたくなかった!」

翼が長谷くんの手を掴む。その指先が、小さく震えていた。長谷くんが息を呑む。

「翼?」

改めて翼の顔を見る。頬は以前よりも痩せ、服もどこかぶかぶかに見えた。

「お前…なんで、こんなに痩せてるんだよ」

『恭弥にだって、こんな俺……見せたくなかったのに』

翼はグッと下唇を噛んだ。それから、逃げるように逸らしていた視線を上げる。まっすぐに、長谷くんを見つめた。

「俺、死ぬんだ」

「は?」

「病気なんだよ」

その言葉を聞いた瞬間、長谷くんの表情が固まった。

「何言ってんだよ」

乾いた笑いが漏れる。

「冗談だろ?」

翼は何も答えない。

「なあ、翼」

長谷くんの声が震え始める。

「俺たち、親友だろ?」

一歩、翼に近づく。

「この先も……一緒だよな?」

その言葉に、翼はそっと目を伏せた。

『俺だって…恭弥と一緒にいたい。この先も、くだらないことで笑って、馬鹿みたいにふざけて……ずっと一緒にいたかった』

胸が苦しい。息をするだけで、心臓をぎゅっと握り潰されているように痛かった。