翼は、家族の前では平然としていた。まるで、自分に告げられたことではないみたいに。
「治療のために、入院してもらう必要があります」
先生の言葉に、翼が口を開く。
「いつから春休み入ってから?」
「それだと、間に合わなくなる可能性があります。できれば今すぐ…」
「そっか」
翼は小さく頷いた。そして、少し迷ってから尋ねる。
「その治療をするとさ……髪が抜けたり、痩せたりするの?」
先生は少し黙ってから、静かに答えた。
「副作用で気持ちが悪くなったり、食事がとれなくなったりすることがあります。今の姿とは、大きく変わってしまうかもしれません」
「そうなんだ」
翼は、しばらく黙っていた。けれど、その表情は変わらない。
『まあ、調子悪いなとは思ってた。なんか手に力が入らないし。家で倒れて、そのまま病院に運ばれたんだ。…学校じゃなくて、本当によかった。望叶に心配かけたくない。それにそんな姿……望叶には見せたくない』
聞こえてきた心の声に、胸が苦しくなる。
『望叶には、一番元気で、楽しかった俺の記憶だけを残してほしい』
翼は、拳をぎゅっと握り、顔を上げる。
「分かった」
翼の声は、どこまでも落ち着いていた。
「じゃあ、学校には海外留学とかって言ってほしい」
「海外留学?」
「うん。父さん学者だし、一緒に勉強しに行ったってことにして。病気で休学するなんて、言いたくないから」
翼は笑った。その笑顔が、あまりにもいつも通りで。だからこそ、苦しかった。
「分かった」
翼のお父さんが静かに頷く。その瞬間、私は気づいた。翼は、自分の未来がどうなるか分からないのに。それでも――私のことばかり考えていたんだ。
「治療のために、入院してもらう必要があります」
先生の言葉に、翼が口を開く。
「いつから春休み入ってから?」
「それだと、間に合わなくなる可能性があります。できれば今すぐ…」
「そっか」
翼は小さく頷いた。そして、少し迷ってから尋ねる。
「その治療をするとさ……髪が抜けたり、痩せたりするの?」
先生は少し黙ってから、静かに答えた。
「副作用で気持ちが悪くなったり、食事がとれなくなったりすることがあります。今の姿とは、大きく変わってしまうかもしれません」
「そうなんだ」
翼は、しばらく黙っていた。けれど、その表情は変わらない。
『まあ、調子悪いなとは思ってた。なんか手に力が入らないし。家で倒れて、そのまま病院に運ばれたんだ。…学校じゃなくて、本当によかった。望叶に心配かけたくない。それにそんな姿……望叶には見せたくない』
聞こえてきた心の声に、胸が苦しくなる。
『望叶には、一番元気で、楽しかった俺の記憶だけを残してほしい』
翼は、拳をぎゅっと握り、顔を上げる。
「分かった」
翼の声は、どこまでも落ち着いていた。
「じゃあ、学校には海外留学とかって言ってほしい」
「海外留学?」
「うん。父さん学者だし、一緒に勉強しに行ったってことにして。病気で休学するなんて、言いたくないから」
翼は笑った。その笑顔が、あまりにもいつも通りで。だからこそ、苦しかった。
「分かった」
翼のお父さんが静かに頷く。その瞬間、私は気づいた。翼は、自分の未来がどうなるか分からないのに。それでも――私のことばかり考えていたんだ。



