君が描いた色の中で、もう一度君に恋をする

「あの、大丈夫? 顔、真っ青だけど」

「え、あ……は、はい」

『待って。めっちゃ警戒されてない!?』

翼が一瞬、固まる。

『あ、そっか。まず名前名乗るか』

……こんなにテンパってたんだ。知らなかった。今まで何度もこの日のことを思い出したけれど、翼がこんなふうに慌てていたなんて、思いもしなかった。

「俺、時宮翼(ときみや つばさ)。よろしく」

「あ、どうも」

……私、無愛想だな。客観的に見ると、よくわかる。

『「どうも」って! めちゃくちゃ距離あるじゃん!』

翼が心の中でツッコんでいる。……ごめん。当時の私は、初対面の男の子と話す余裕なんてなかったんだ。

「……とりあえず、ここ座んなよ」

「そうですね」

促されて、私はそっとベンチに腰を下ろす。

「ちょっと待ってて」

「え、はい」

翼はそう言うと、駆けていった。気になって、私もその後を追う。すると――。

『確か……自販機あった。あった』

翼が自動販売機の前で立ち止まる。

『なんか飲んだほうがいいよな』

そして、飲み物を眺め始めた。

『あ、ずんだミルクティーうまそう』

ずんだミルクティー。そんなのあるんだ。ちょっと気になる。

『いや、待て。調子悪そうなのに、これ勧めたら絶対ダメだろ』

…たしかに。

『ここは無難に水……』

翼が真剣な顔で水のボタンを見つめる。

『って、水にも種類あるじゃん』

そこまで悩む?

『アルプスの水? 日本の山からとれた水? 香り付き?』

翼の心の声が、どんどん混乱していく。

『わけわからん……』

少しの沈黙のあと。

『日本の山の水にしよう』

ガコン。翼がお金を入れて、ペットボトルを取り出した。思わず笑いそうになる。水の種類で、こんなに真剣に悩んでくれたんだ。

「……ふふ」

それにしても。ずんだミルクティー。……ちょっと飲んでみたかったかも。