記憶の底で 〜魔王の毒に捕らわれる〜

「私、結婚します」




「ありがとう。マジ助かるわ」




でも、悪いけど…




「すみません。でも私は今、自分のことを何も覚えてないんです。だからすぐに籍を入れるたりとかはできないです」




そう。私は今、自分の名前すらわからない。




残念ながらそもそも結婚できない。




「じゃあ、記憶取り戻したらっていうのは?そのためにも俺がこれから助けるし」




「…わかりました。これからよろしくお願いします」




「あっ。待って。」と神楽木さんはハッとした様子で話かけた。




「未成年じゃないよね?未成年だと俺、誘拐犯になるんだけど…」




確かに…




あっ!でも!





「今って何年ですか?」




「20XX年だけど」




ということは




「今年でちょうど18歳なので大丈夫ですね」




「年分かるの?」




「なんか、覚えてることと覚えてないことがあって、たまたま誕生日は覚えてました」




「よかった。じゃあとりあえず家、帰ろ。今、車呼ぶから」




そう言って神楽木さんはスマホを持って「〇〇通りのとこ。小さい車でいいよ。あと、婚約者連れてくから」と要件を伝えて電話を切った。




セレブって車呼ぶんだ…




こんなの実際に見たことない(これまでの記憶ないけど!!!)




しばらくして高そうな黒塗りの車が来て「後ろ乗って」と神楽木さんに促さ、高そうなシートに腰を下ろした。




「「「………」」」




みんなが黙り込む中「ねぇ」と沈黙を破ったのはまたも、神楽木さんだった。




「お前、名前もわかんないの?」



「わからないです」



信じられないよね…



運転手さんも一瞬驚いたのがミラーで見えた。



多分この人は私が神楽木さんと結婚するのを知っている。



大事な会社の社長の妻が記憶喪失なんてきっと不安でしかないだろうな…




「じゃあなんて呼ぼうかなー。リボンしてるしリボンちゃん?」




神楽木さんはまた笑いながら言ってきた。




私はなぜかわからないがすみれ色のリボンの髪飾りをつけていた。




それも少し古い。




大切なものだったのかな?




それにしてもリボンちゃんはダサすぎる…




もうちょっとマシなのあったよね…?




「もうちょっと普通のやつでお願いできますか?」




「流石に冗談。うーん、じゃあ…」




「結うって書いて結は?」




むすび…



可愛いし気品があって控えめに言ってすごく良い!




目をキラキラ輝かせてると

「気に入った?じゃあこれからお前は神楽木結と名乗ること」




神楽木結…





きっとここからが私の新しい人生の物語なんだ。