シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―

 昼休み。

「梨来さん」

「ん?」

「最近、直充先輩とよく一緒にいません?」

 口元まで運んでいたカップが止まった。

「直充くん?」

「はい」

 向かいに座る希美が、じっと梨来を見ている。

 今日は事務室近くの休憩スペースで昼食を取っていた。

 希美はコンビニのサンドイッチ。

 梨来は小さな弁当。

 さっきまで授業の話をしていたはずなのに、いつの間にか直充の話になっていた。

「そんなに一緒にいる?」

「いますよ。この前、学食一緒にいたし」

「うん」

「猫も一緒に探してたし」

「うん」

「昨日も一緒に帰ってましたよね?」

 梨来の手が止まる。

「……見てたんだ」

「見たっていうか、見えました。正門の近くで」

「そっか」

「で?」

「で?」

「昨日、何してたんですか?」

「一緒に帰ったよ」

「それは知ってます」

「途中でコンビニにも寄った」

「ほら!」

「何が?」

「寄り道してるじゃないですか!」

「うん」

「二人で!」

「そうだね」

「何買ったんです?」

「飲み物と、チョコ」

「チョコ!?」

 思った以上に大きな声だった。

 近くの学生がちらりとこちらを見る。

「希美ちゃん、声」

「あ、すみません」

 希美は慌てて身を縮めた。

 けれど、目だけは輝いたままだった。

「チョコ、一緒に買ったんですか?」

「一個だけ」

「一個!?」

「また大きいよ」

「それで?」

「一緒に食べたよ」

「…………」

「何、その顔」

 希美は両手で口元を覆った。

「それ、デートです」

「デートになるの?」

「なりますよ!」

 梨来は少し考える。

「私はただ、一緒に帰って寄り道しただけだと思ってた」

「それをデートって言うんです!」

「二人で出かける約束をしたわけでもないよ?」

「帰り道でもデートはデートです!」

「そういうものなんだ」

「梨来さん……」

「デートの意味は分かってるよ」

「じゃあなんで!?」

 梨来は少し笑った。

「自分がしてたとは思ってなかっただけ」

「そこです!」

「希美ちゃん、さっきから忙しいね」

「梨来さんのせいです!」

「私は昨日の話をしただけだよ」

「その昨日がすごいんですって!」