シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―

「梨来さん!」

 午後。

 廊下を歩いていた梨来は、後ろから呼ばれて振り返った。

「んー?」

 希美が小走りでやってくる。

「ちょっと来てください!」

「どうしたの?」

「猫です!」

「猫?」

「いなくなりました!」

「……猫が?」

「はい!」

 梨来は首を傾げた。

「大学の猫?」

「違います。迷子の猫です!」

「迷子の猫が、迷子になったの?」

「そう言われるとややこしい!」

 希美に連れられて向かった先には、一人の女子学生がいた。

 しゃがみ込み、スマートフォンの画面を見つめている。

「この子です」

 画面には一匹の猫。

 白と茶色の毛に、青い首輪。

「この近くで見かけたって聞いて、探しに来たみたいなんです」

「飼い主さん?」

「妹さんの猫らしくて」

 梨来もしゃがむ。

「名前は?」

「チョコです」

 女子学生が答えた。

「昨日の夜、家から出ちゃって……ずっと探してるんですけど」

「そっかぁ」

 梨来は写真を見る。

 まだ若そうな猫だった。

「この大学で見た人がいるの?」

「はい。午前中に正門の近くで似た猫を見たって」

「じゃあ、まだ近くにいるかもしれないね」

「……はい」

 女子学生の顔には疲れが見える。

 昨夜から探しているのなら、ほとんど眠っていないのかもしれない。

 梨来は立ち上がった。

「一緒に探そっか」

「え?」

「私も探すよ」

「でも、お仕事……」

「少しくらいなら大丈夫」

「梨来さん、そう言うと思った」

 希美が笑う。

「希美ちゃんも?」

「もちろん探します!」

「次の講義は?」

「…………」

「あるんだねぇ」

「まだ時間あります!」

「遅れないでね?」

「分かってます!」

 梨来はふふっと笑った。