シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―

「送りません?」

「……会ったときに聞く」

「なんでですかぁ」

「その方が普通に聞けるもん」

「もう」

 希美が呆れたように笑う。

 そのとき、テーブルの上に置いていた梨来のスマートフォンが震えた。

「ん?」

 何気なく画面を見る。

「…………」

 直充くん。

「梨来さん?」

「……直充くんから」

「えっ!?」

「また声大きいよぉ」

「だって今、直充さんの話してたところですよ!?」

「私もびっくりした」

 たった今、直充のことを考えていたところだった。

 梨来はスマートフォンを手に取り、届いたメッセージを開く。

『今日も17:30までですか?』

「…………」

 今、何してるんだろう。

 そう思っていた相手から連絡が来た。

 それだけで、少し嬉しい。

「何て来たんですか?」

「今日も五時半までですかって」

「…………」

 希美が梨来を見る。

「なに?」

「それ、一緒に帰るやつじゃないですか?」

「え?」

「だって、直充さんが梨来さんの仕事が終わる時間を聞いてるんですよ?」

「何か用事があるのかもしれないよ?」

「じゃあ、聞いてみましょう」

「何を?」

「用事です」

「わざわざ?」

「気になるじゃないですか」

「希美ちゃんがでしょ」

「梨来さんは気にならないんですか?」

「…………」

 気になる。

 梨来は画面へ視線を戻し、文字を打った。

『うん。今日も17:30までだよ。どうしたの?』

 送信すると、ほどなくして既読がつく。

『俺もそのくらいに終わります』

 続けて、もう一通。

『一緒に帰りますか?』

「…………」

「何て?」

「直充くんも、そのくらいに終わるって」

「それで?」

「……一緒に帰りますか、って」

「ほらぁ!」

「希美ちゃん、声大きいってば」

「だって!」

 希美が嬉しそうに身を乗り出す。

「直充さんから誘ってるじゃないですか」

「誘ってるっていうか……帰る時間が同じだからじゃない?」

「じゃあ梨来さん、断るんですか?」

「…………」

 梨来は画面を見る。

『一緒に帰りますか?』

 断る理由なんて、なかった。

 むしろ。

「……帰る」

「私じゃなくて、直充さんに返してください」

「…………」

 梨来は少しだけ希美から顔を逸らし、文字を打つ。

『うん。一緒に帰ろ』

 送信する。

 すぐに既読がついた。

『分かりました』

「…………」

「梨来さん」

「なに?」

「顔」

「え?」

「嬉しそうです」

「……普通だよぉ」

「今の顔でそれ言います?」

 梨来はスマートフォンで口元を隠した。

「普通なの」

「じゃあ、一緒に帰らなくても同じ顔します?」

「…………」

「ほら」

「希美ちゃん、意地悪」

「そんなことないですよ」

 希美は楽しそうに笑っている。

 梨来はもう一度、画面を見る。

『一緒に帰りますか?』

 直充くんから聞いてくれた。

 それが、なんだか嬉しい。

 五時半。

 いつもなら、ただ仕事が終わる時間なのに。

 ……早くならないかなぁ。