シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―

「それで、梨来さん」

「んー?」

「直充さんとは、その後どうなんですか?」

「その後って?」

「連絡先、交換したじゃないですか」

「交換っていうか、希美ちゃんが教えてくれたんでしょ」

「同じようなものです」

「違うと思うけどなぁ」

「連絡したんですか?」

「したよ」

「えっ!」

「希美ちゃん、声大きいよぉ」

「だって、いつですか?」

「この前」

「何て送ったんですか?」

「迷子の男の子のこと」

「迷子?」

「うん。大学の近くで、小学生の男の子がいなくなったことがあったでしょ?」

「ああ、ありましたね」

「その子、直充くんが見つけたの」

「えっ、直充さんが?」

「うん。私もあとから聞いたんだけど、怪我してないか気になって。それで連絡したの」

「それだけですか?」

「うん」

「他には?」

「してないよ」

「せっかく連絡先交換したのに?」

「だって、特に用事ないもん」

「用事がなくても連絡していいんですよ」

「何を?」

「何でもいいんです。今日何してたとか、お昼何食べたとか」

「…………」

 今日、何してたんだろう。

 講義だったのかな。

 お昼は、やっぱりお弁当だったのかな。

「……聞いてみたいかも」

「ほら!」

「でも、それだけ聞くの?」

「それだけでいいんです」

「なんで?」

「知りたいからですよ」

「…………」

 知りたいから。

 梨来はその言葉を頭の中でもう一度繰り返した。

 確かに、知りたい。

 今日何をしていたのか、どんな一日だったのか、お昼に何を食べたのか。

 会ったときなら、たぶん普通に聞ける。

 でも、それだけのために連絡するというのは、まだ少し不思議だった。

「それだけで連絡するの、なんか変じゃない?」

「全然変じゃないです」

「そうなの?」

「そうです」

「へぇ……」

「じゃあ、梨来さんから送ってみます?」

「今?」

「はい」

「…………」

 梨来はスマートフォンを見る。

 直充くん、今何してる?

 頭の中で文章にしてみる。

 送ろうと思えば、送れる。連絡先だって知っている。

 それなのに、送信するところまではいかなかった。