シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―

 少し歩いたところで。

「……っ」

 こめかみの奥が、ずきりと痛んだ。

 直充は足を止め、額へ手を当てる。

 頭痛。

 はっきりとした痛み。

 それだけではない。

 急に、強い眠気が押し寄せてきた。

 目を閉じれば、そのまま眠ってしまいそうなほど。

 直充は近くのベンチへ腰を下ろした。

「…………」

 昨日とは違う。

 五分ほど先を見たときは、一瞬の眩暈と軽い疲労だった。

 今日は前より多くリューズを回した。

 どれほど先になるのか分からないまま。

 結果として見えたのは、およそ一時間先。

 そして、頭痛と強い眠気。

 日誌には書かれていた。

 長く見るほど、体への負担が大きくなる。

 前より遠くを見た。

 前より負担も大きい。

 日誌の記述と一致しているように思える。

 けれど、一度だけで何もかも決めつけることはできない。

「…………」

 もし、さらに多く回したら。

 もっと遠くが見えるのか。

 その考えが一瞬だけ浮かぶ。

 けれど、直充は鞄へ手を伸ばさなかった。

 確かめる理由はない。

 今日は必要だった。

 想真を見つけるための手掛かりが必要だった。

 だから使った。

 少し離れたところに、母親と手を繋いでいる想真が見える。

 未来で見た救急車はない。

 母親の悲鳴もない。

「…………」

 よかった。

 時計がどこまで未来を見せられるのかより、今はそれだけでいい。

 便利だから。

 知りたいから。

 そんな理由では使わない。

 必要なときだけ。

 直充は改めてそう決めた。