「それに今日の紗知が積極的だったのは全部俺のためだろ? だったらもっとたぶらかしてみてよ。紗知のせいでおかしくなりたい」
「た、たぶらかす……?」
「俺この辺が弱いかも」
Tシャツの襟ぐりをぐいと引っ張ってわざと喉から鎖骨のラインをみせつけてくる。いつもの意地悪だってわかってるのに顔からプスプス音がする、絶対煙が出てる。
それくらい大人な発言が飛び出した。
「そんなこと言われても、脱がすってどうやって……」
はーい、バンザイして~!
子供の頃はそんなふうにお母さんが着替えさせてくれてたけど、どう考えても違うと思う。
で、その後キス?
だけど、どこにどうしたらいいんだろう。ナツ君はいつもどんなふうにしてくれてる?
ボーッとなっちゃうからあんまり記憶がない……そんな私って最低なのでは?
たぶらかすようなキスって何?
どうしたらできるんだろう。
どうしよう、全然わからない。
それに翻弄するって、弄ぶってことだし、ナツ君を手のひらで転がすような器用さが私にあるわけない。
悩み抜いた結果、降参する気持ちでそっと顔を上げたら、ナツ君はもう小さな寝息を立てていた。
子供みたいな顔で。
嘘でしょ。
私になんて何も期待してない証拠じゃない?
この寝落ちスピードとオンオフの落差に翻弄されてるのはいつもこっちの方だよ。
でも今日はいろんなところに連れ回したし、慣れないことをいっぱいさせたから疲れて当然だよね。
自分ばっかり楽しんでごめんね。
明日のお迎えは確か7時って言ってたから、もう少しだけ遅くできないか片桐さんに聞いてみよう。
『お疲れさまです。明日の迎えですが少し後ろ倒しじゃダメですか?』
そっとベッドから抜け出してポチポチ。よし、送信。



