《深夜0時、君に会いに行く
影を踏んで、星を連れて
夜に全てを隠せばいい
雲を避けて、三日月の上で
欠けて零れた一滴を呑んで
光りで満たされる前に……
深夜0時、君が会いに来る
影を越えて、夢を連れて
夜に包まれて眠ればいい
雲を掛けて、三日月の上で
欠けて満ちる力を待って
光りが溢れだす前に……》
曲を聴いたあとすぐに、彼にヘッドフォンを突き返した。
「いいんじゃない、とっても」と一語一句強めて言った。殴ってやろうかと思ったけど、そこは我慢してやった。笑顔も作ってみたら、彼はA4サイズの茶封筒を突き出して、こう言った。
「あとはお前の好きにしろ」
『売れなかったら絶対殴る。覚えてろよ』とか思って、顔で圧をかけてみたけど、どうやら彼に効果はないようだ。
鼻息を飛ばして、椅子の上で胡座をかいた。そしてすぐに煙草を吸った。こいつには「禁煙」という二字もないらしい。
ムカつくから、貰った封筒を半分に折ってやった。けど、中身が気になるし、少しだけ見たら、さらにムカついて、もう半分に折ってやった。
「ありがとうございました」一語一句、はっきりと言ってみたら、急に表情を変えて、「どういたしまして」と普通に言った。
気取ってみえるけど、実はいいやつかもしれない。
「あの店のこと、詳しいのか」彼が急に聞いてきた。
なんだ、やっぱりと思ったけど、なんか様子がおかしい。椅子の上で胡座をかいて、膝に肘をついて頬杖までついている。器用なやつだ。
「まぁ、昔から行ってるから、それなりに」僕がそう言うと、彼は一、二回頷いた。あとは黙っていた。
『なんか言わんかい』とか突っ込んでみたけど、彼には彼の事情があるし、僕が聞いたことには応えてくれるから、どうでもいい。
でも、少しだけ気になるから、いつか聞いてみよう。だって、面白そうだし、あとで奢れとか言われたときに使えそうだし、便利だ。
用も済んだから、「じゃ、また」と言ったら、彼は少しだけ頷いた。どうやら、邪魔みたいだ。さっさと帰って寝ようと思った。
集合住宅から出ると、一台のタクシーがタイミングよく停まった。ラッキーだと思ったけど、運転手が僕の名前を聞いてきた。
多分、いや、彼はかなり用意周到だ。
