その青は廻る

 その日、寝る前に、一応は考えたけど、僕の語彙力だと足りなかった。だから、AIに頼んだら、割といい感じの歌詞ができた。でも、持って行ったら、すぐにバレた。

『ですよね』とか思って、笑ってみたけど、彼は怒っているらしい。眉間に皺が寄っている。まだ若いのに、跡になって、後悔したら、その時に笑ってやる。

 そんな日々が続いて、また別の日のこと。

 店で彼を真似して、女の子をつけるのを断ったけど、『そういえば、あの子どこ行ったんだろ』とか思ってた。夜の店は人が変わりやすいし、別の店に行ったらいるかもしれない。

「佐伯さんって、彼女いるんすか」

 普通に聞いた。でも、多分……。

「なんだ、急に」

 今日は少し機嫌がいいらしい。口元がニヤついている。

「だって、こういう店、彼女的にはよろしくないじゃん」
 手持ち無沙汰で、おしぼりで鶴を折りながら、彼をちらちらと見ていた。

「まぁ、そうだろうな……」

 お、彼の様子が変わったみたいだ。少し近づいてみよう。

「あ、喧嘩中とかっすか。てか、別れたとか?」

「そういうのはいない」そう言って、彼は煙草を吸った。あれ以来、酒はやめたようだ。

「え、佐伯さんって……。俺、狙われてる?」思い切ってふざけてみた。

「アホか……」嫌そうな顔してるけど、口元がニヤついてる。

 いいことがあったのかもしれない。今がチャンスだ。昨日考えた歌詞を出してみよう。

「これ、考えました。ちゃんと自分で」素知らぬ顔をして言ったら、すぐ紙を見てから、「悪くない。ただ、誤字脱字が多い」と言った。

 やっぱり細かい男だ。彼女が出来てもすぐ別れそうだ。
万が一にでも、こいつに彼女が出来たら、その時は絶対に邪魔してやる。

 僕は女性に興味はないし、かといって男性が好きなわけではない。けど、僕と違って、彼は女性に興味がないというより、視界に入ってなさそうだった。

 そんな日々を続けて、やっと歌詞が出来て、曲を作り始めた頃。

「また来てんすか、暇そうでいいすね」一人の黒服が来て、嫌そうな顔をして、彼に言った。

「金は払ってる、何もしてない、ただ見てるだけだ」

 彼の言葉を聞いて、首を傾げた。けど、どうやら選択肢が狭いようだ。

「何度来ても変わりませんよ、今は」

「なら、いい。帰るぞ」

 彼はそう言ってから、テーブルの上を軽く片付けて、僕のほうを見る。けど、僕は目的があるし、座ったまま、澄ましていた。そしたら、彼は何も言わず、テーブルの上に数枚の札を置いて、店から出て行った。

 彼は多分、いや、かなり度を越してる不器用な男だ。