君のとなり 〜約束の168〜

十二月。

文化祭の余韻もすっかり消えて、学校は完全に受験モードになっていた。

私は一月の試験に向けて、毎日机に向かっていた。

翔はもう合格が決まっている。

だから今は、自分のためというより、私の受験に付き合うようにして勉強を見てくれていた。

以前なら、放課後に少し遠回りして帰ったり、何気ない話をしながら歩いたりしていた。

でも、そんな中でも翔と一緒にいられる時間は嬉しかった。

「瑠夏、ここ」

翔が私の参考書を覗き込む。

「この問題、こう考えたほうが早い」

「え……あ、本当だ」

翔が指先で問題文をなぞる。

その距離が近くて、私は少しだけ緊張した。

「分かった?」

「うん」

「じゃ、自分でもう一回やってみ」

「分かった」

そう言って、私は問題に向き直る。

翔は私が解き終わるまで、黙って待っていてくれる。

そんな時間が、愛おしかった。

そして、冬休み。

本来なら、もっと一緒にいたい。

どこかへ遊びに行きたい。

映画だって見たい。

でも、私にはまだ受験が待っていた。

朝から机に向かって。

お昼を食べて。

また勉強して。

気づけば一日が終わっている。

そんな冬休みだった。

だけど――

クリスマスの日だけは、少し違った。

「今日くらい、いいよな」

翔からそう言われて、私は笑った。

「うん」

ほんの短い時間。

二人で会って、少しだけ話して。

一緒に温かいものを食べて。

それから、少しだけ一緒に過ごす。

華やかなクリスマスなんて、今年は必要なかった。

翔といられる。

それだけで十分だった。

帰り道。

冷たい風が吹いて、私はマフラーに顔を埋めた。

「寒い?」

「ちょっとだけ」

「じゃあ、もう少しこっち来いよ」

翔が自然に私との距離を縮める。

肩が触れる。

それだけで、胸が温かくなった。

「ねえ、翔」

「ん?」

「来年も……一緒にクリスマス過ごせるかな」

口にした瞬間、少しだけ不安になった。

来年は大学生。

今までとは何もかも変わる。

だから、翔は少し黙ってから、私を見る。

そして、いつものように笑った。

「過ごそうぜ」

「……ほんと?」

「ああ」

「約束?」

「約束」

その言葉が嬉しくて、私は笑った。

来年も。

再来年も。

ずっと一緒にいられたらいい。

そんな未来を、当たり前みたいに思っていた。

今はまだ、何も知らない。

春から始まる新しい毎日が、私たちにどんな変化をもたらすのか。

そんなことを考えることもなく。

ただ――

来年も一緒にクリスマスを過ごそう。

その約束だけを、大切に胸にしまった。