十二月。
文化祭の余韻もすっかり消えて、学校は完全に受験モードになっていた。
私は一月の試験に向けて、毎日机に向かっていた。
翔はもう合格が決まっている。
だから今は、自分のためというより、私の受験に付き合うようにして勉強を見てくれていた。
以前なら、放課後に少し遠回りして帰ったり、何気ない話をしながら歩いたりしていた。
でも、そんな中でも翔と一緒にいられる時間は嬉しかった。
「瑠夏、ここ」
翔が私の参考書を覗き込む。
「この問題、こう考えたほうが早い」
「え……あ、本当だ」
翔が指先で問題文をなぞる。
その距離が近くて、私は少しだけ緊張した。
「分かった?」
「うん」
「じゃ、自分でもう一回やってみ」
「分かった」
そう言って、私は問題に向き直る。
翔は私が解き終わるまで、黙って待っていてくれる。
そんな時間が、愛おしかった。
そして、冬休み。
本来なら、もっと一緒にいたい。
どこかへ遊びに行きたい。
映画だって見たい。
でも、私にはまだ受験が待っていた。
朝から机に向かって。
お昼を食べて。
また勉強して。
気づけば一日が終わっている。
そんな冬休みだった。
だけど――
クリスマスの日だけは、少し違った。
「今日くらい、いいよな」
翔からそう言われて、私は笑った。
「うん」
ほんの短い時間。
二人で会って、少しだけ話して。
一緒に温かいものを食べて。
それから、少しだけ一緒に過ごす。
華やかなクリスマスなんて、今年は必要なかった。
翔といられる。
それだけで十分だった。
帰り道。
冷たい風が吹いて、私はマフラーに顔を埋めた。
「寒い?」
「ちょっとだけ」
「じゃあ、もう少しこっち来いよ」
翔が自然に私との距離を縮める。
肩が触れる。
それだけで、胸が温かくなった。
「ねえ、翔」
「ん?」
「来年も……一緒にクリスマス過ごせるかな」
口にした瞬間、少しだけ不安になった。
来年は大学生。
今までとは何もかも変わる。
だから、翔は少し黙ってから、私を見る。
そして、いつものように笑った。
「過ごそうぜ」
「……ほんと?」
「ああ」
「約束?」
「約束」
その言葉が嬉しくて、私は笑った。
来年も。
再来年も。
ずっと一緒にいられたらいい。
そんな未来を、当たり前みたいに思っていた。
今はまだ、何も知らない。
春から始まる新しい毎日が、私たちにどんな変化をもたらすのか。
そんなことを考えることもなく。
ただ――
来年も一緒にクリスマスを過ごそう。
その約束だけを、大切に胸にしまった。
文化祭の余韻もすっかり消えて、学校は完全に受験モードになっていた。
私は一月の試験に向けて、毎日机に向かっていた。
翔はもう合格が決まっている。
だから今は、自分のためというより、私の受験に付き合うようにして勉強を見てくれていた。
以前なら、放課後に少し遠回りして帰ったり、何気ない話をしながら歩いたりしていた。
でも、そんな中でも翔と一緒にいられる時間は嬉しかった。
「瑠夏、ここ」
翔が私の参考書を覗き込む。
「この問題、こう考えたほうが早い」
「え……あ、本当だ」
翔が指先で問題文をなぞる。
その距離が近くて、私は少しだけ緊張した。
「分かった?」
「うん」
「じゃ、自分でもう一回やってみ」
「分かった」
そう言って、私は問題に向き直る。
翔は私が解き終わるまで、黙って待っていてくれる。
そんな時間が、愛おしかった。
そして、冬休み。
本来なら、もっと一緒にいたい。
どこかへ遊びに行きたい。
映画だって見たい。
でも、私にはまだ受験が待っていた。
朝から机に向かって。
お昼を食べて。
また勉強して。
気づけば一日が終わっている。
そんな冬休みだった。
だけど――
クリスマスの日だけは、少し違った。
「今日くらい、いいよな」
翔からそう言われて、私は笑った。
「うん」
ほんの短い時間。
二人で会って、少しだけ話して。
一緒に温かいものを食べて。
それから、少しだけ一緒に過ごす。
華やかなクリスマスなんて、今年は必要なかった。
翔といられる。
それだけで十分だった。
帰り道。
冷たい風が吹いて、私はマフラーに顔を埋めた。
「寒い?」
「ちょっとだけ」
「じゃあ、もう少しこっち来いよ」
翔が自然に私との距離を縮める。
肩が触れる。
それだけで、胸が温かくなった。
「ねえ、翔」
「ん?」
「来年も……一緒にクリスマス過ごせるかな」
口にした瞬間、少しだけ不安になった。
来年は大学生。
今までとは何もかも変わる。
だから、翔は少し黙ってから、私を見る。
そして、いつものように笑った。
「過ごそうぜ」
「……ほんと?」
「ああ」
「約束?」
「約束」
その言葉が嬉しくて、私は笑った。
来年も。
再来年も。
ずっと一緒にいられたらいい。
そんな未来を、当たり前みたいに思っていた。
今はまだ、何も知らない。
春から始まる新しい毎日が、私たちにどんな変化をもたらすのか。
そんなことを考えることもなく。
ただ――
来年も一緒にクリスマスを過ごそう。
その約束だけを、大切に胸にしまった。



