文化祭が終わると、学校の空気は一気に変わった。
廊下を歩いていても、聞こえてくるのは、
「過去問、何年分やった?」
「次の模試、判定上げたいよな」
そんな言葉ばかり。
三年生にとって、いよいよ受験が現実になった。
私たちも、例外じゃなかった。
私は一月の試験に向けて、毎日のように机に向かった。
そして翔は、十一月下旬に総合型選抜試験を控えていた。
放課後。
図書室で向かい合わせに座っていても、以前みたいに話してばかりはいられない。
参考書を開いて。
問題を解いて。
分からないところを教え合って。
疲れたときだけ、そっと顔を上げる。
すると、向こうから翔がこっちを見ていることがあった。
目が合う。
それだけで、少しだけ笑う。
それが、今の私たちの日常だった。
「瑠夏」
「ん?」
「ちゃんと飯食ってる?」
「食べてるよ」
「ほんとか?」
「ほんと」
「ならいい」
そう言って、また参考書に視線を落とす。
そんな何気ないやり取りが、私は好きだった。
特別なことなんて何もない。
それでも、翔が隣にいる。
それだけで頑張れた。
そして十一月下旬。
翔の試験の日がやってきた。
私は試験会場へ向かう翔を見送った。
「頑張ってね」
「おぅ」
「翔なら大丈夫」
そう言うと、翔は少しだけ照れたように笑った。
「瑠夏もな」
「うん」
ほんの短い会話。
それでも、その日はずっと翔のことが頭から離れなかった。
ちゃんとできたかな。
緊張してないかな。
そんなことを考えながら、私は自分の勉強を続けた。
そして――十二月。
結果が出た。
「……受かった」
翔から届いたメッセージを見た瞬間、私は思わず声を上げた。
『本当に?』
すぐに返信する。
『ほんと。合格した』
画面を見つめながら、胸がいっぱいになった。
翔が合格した。
それだけで嬉しかった。
『おめでとう!』
そう送ると、すぐに返事が届いた。
『ありがとな』
たったそれだけなのに。
なんだか、翔の嬉しそうな顔が目に浮かんだ。
翔が進むのは、地元の大学。
スポーツ健康科。
高校で続けてきた陸上とは、また違った形でスポーツに関わっていく。
その未来を思うと、私まで嬉しくなった。
だけど。
スマホを握りしめたまま、ふと気づいてしまった。
翔には、もう次の春が決まった。
そして私も、これから受験を終えて、その先へ進んでいく。
今まで当たり前だった学校生活は、もう残り少ない。
一緒に登校して。
一緒に帰って。
教室で顔を見て。
放課後に少しだけ話して。
そんな毎日が、少しずつ終わりに近づいている。
嬉しいはずなのに。
胸の奥が、少しだけ痛かった。
『私も頑張らなきゃ』
そう打ち込んで送る。
すると翔から、
『一緒に頑張ろうな』
と返ってきた。
その言葉を見つめながら、私は小さく笑った。
うん。
一緒に頑張ろう。
残された時間を、大切にしよう。
今はまだ――
この隣にいられるから。
廊下を歩いていても、聞こえてくるのは、
「過去問、何年分やった?」
「次の模試、判定上げたいよな」
そんな言葉ばかり。
三年生にとって、いよいよ受験が現実になった。
私たちも、例外じゃなかった。
私は一月の試験に向けて、毎日のように机に向かった。
そして翔は、十一月下旬に総合型選抜試験を控えていた。
放課後。
図書室で向かい合わせに座っていても、以前みたいに話してばかりはいられない。
参考書を開いて。
問題を解いて。
分からないところを教え合って。
疲れたときだけ、そっと顔を上げる。
すると、向こうから翔がこっちを見ていることがあった。
目が合う。
それだけで、少しだけ笑う。
それが、今の私たちの日常だった。
「瑠夏」
「ん?」
「ちゃんと飯食ってる?」
「食べてるよ」
「ほんとか?」
「ほんと」
「ならいい」
そう言って、また参考書に視線を落とす。
そんな何気ないやり取りが、私は好きだった。
特別なことなんて何もない。
それでも、翔が隣にいる。
それだけで頑張れた。
そして十一月下旬。
翔の試験の日がやってきた。
私は試験会場へ向かう翔を見送った。
「頑張ってね」
「おぅ」
「翔なら大丈夫」
そう言うと、翔は少しだけ照れたように笑った。
「瑠夏もな」
「うん」
ほんの短い会話。
それでも、その日はずっと翔のことが頭から離れなかった。
ちゃんとできたかな。
緊張してないかな。
そんなことを考えながら、私は自分の勉強を続けた。
そして――十二月。
結果が出た。
「……受かった」
翔から届いたメッセージを見た瞬間、私は思わず声を上げた。
『本当に?』
すぐに返信する。
『ほんと。合格した』
画面を見つめながら、胸がいっぱいになった。
翔が合格した。
それだけで嬉しかった。
『おめでとう!』
そう送ると、すぐに返事が届いた。
『ありがとな』
たったそれだけなのに。
なんだか、翔の嬉しそうな顔が目に浮かんだ。
翔が進むのは、地元の大学。
スポーツ健康科。
高校で続けてきた陸上とは、また違った形でスポーツに関わっていく。
その未来を思うと、私まで嬉しくなった。
だけど。
スマホを握りしめたまま、ふと気づいてしまった。
翔には、もう次の春が決まった。
そして私も、これから受験を終えて、その先へ進んでいく。
今まで当たり前だった学校生活は、もう残り少ない。
一緒に登校して。
一緒に帰って。
教室で顔を見て。
放課後に少しだけ話して。
そんな毎日が、少しずつ終わりに近づいている。
嬉しいはずなのに。
胸の奥が、少しだけ痛かった。
『私も頑張らなきゃ』
そう打ち込んで送る。
すると翔から、
『一緒に頑張ろうな』
と返ってきた。
その言葉を見つめながら、私は小さく笑った。
うん。
一緒に頑張ろう。
残された時間を、大切にしよう。
今はまだ――
この隣にいられるから。



