3月。
卒業式から少し経った頃。
中学時代のクラスメイトが集まる、恒例の同窓会が開かれた。
このクラスでは、卒業してから毎年のように同窓会を開いている。
それくらい、みんな仲がよかった。
久しぶりに顔を合わせた瞬間から、店の中は懐かしい笑い声でいっぱいだった。
「うわー、久しぶり!」
「元気だった?」
「高校生活どう?」
そんな会話が飛び交う中、瑠夏を見つけた女子が、突然声を上げた。
「ねえ、ちょっと待って!」
「ん?」
「瑠夏、めちゃくちゃ可愛くなってない!?」
「え?」
「ほんとだ!」
「めっちゃ可愛くなった!」
「雰囲気変わったよね!」
「高校入ってから何があったの!?」
次々に言われて、瑠夏は困ったように笑った。
「そんな……変わってないよ」
「いや、変わったって!」
「絶対変わった!」
「なんかすごく女の子っぽくなった!」
「もう、やめてよ……」
真っ赤になる瑠夏に、みんなが笑った。
そのとき――。
「ふっふっふっ……」
一人の男子が、意味ありげな笑みを浮かべた。
「俺は、すっごい情報を握っている」
「なになになに?」
女子たちが一斉に食いつく。
「何それ!」
「早く言って!」
「もったいぶらないでよ!」
男子は得意げに周りを見渡した。
「俺らの学校にはな、体育祭でハチマキを交換して告白する伝統があってな」
「ええーーー!?」
「そんなのあるの!?」
「知らなかった!」
「でな」
男子はさらにニヤリと笑う。
「それをやった男が、この中にいる!」
「ええーーー!」
「誰!?」
「誰誰!?」
「めっちゃ気になる!」
男子は、ゆっくりと一人を指差した。
「それは……」
「それは?」
「翔、お前だ!!」
「えっ!?」
突然名前を出され、翔が目を見開く。
「俺!?」
「そう、お前!」
「なんで知ってんだよ!」
「同じ高校なんだから知ってるって!」
周りは一気に騒がしくなった。
「翔が!?」
「誰にハチマキ渡したの!?」
「それって告白したってことでしょ!?」
「待って、誰!?」
男子は、さらにもったいぶる。
「そしてなんと、受け取った女子は……」
「女子は?」
「誰なの!?」
みんなが身を乗り出す。
男子が、ゆっくり瑠夏を見る。
「瑠夏!」
「キャーーー!!❤️」
「ええええーーー!!」
「嘘ーーー!」
「瑠夏だったの!?」
「翔、やるじゃん!」
瑠夏は一瞬で顔が真っ赤になった。
「ちょっと……!」
隣では翔も、照れくさそうに笑っている。
「……まあ」
「まあ、じゃないでしょ!」
「それ、完全に告白じゃん!」
「青春すぎる!」
「すごーい!」
大騒ぎするみんなの中で、ふと一人の女子が思い出したように声を上げた。
「そういえばさ……」
「ん?」
「瑠夏って、その頃、連日告白されてたよね?」
「あーーー!」
「そうそう!」
「毎日のように誰かに呼び出されてた!」
「何人に告白されたか覚えてないよね!」
「放課後になると、また呼び出されてるって感じだった!」
「そうだった!」
瑠夏はますます恥ずかしくなって俯く。
「そんなにだったっけ……」
「そんなにだったよ!」
「しかも、どんどん可愛くなってたし!」
「そりゃ告白されるって!」
そして誰かが、翔を見る。
「……で、そのモテモテだった瑠夏を射止めたのが、翔ってこと?」
「そういうことじゃん!」
「すごーい!」
「翔、めっちゃ頑張ったんじゃん!」
「いや、ほんと!」
翔は少し照れながら、瑠夏を見る。
「……頑張ったよ」
「キャーーー!」
「何その顔!」
「翔、余裕じゃん!」
「もう彼氏だもんね!」
「もう……!」
瑠夏は真っ赤になって、翔の腕を軽く叩いた。
そんな二人を見ていた彩花が、ふっと笑う。
「……やっとか」
「え?」
瑠夏が振り向く。
「何が?」
彩花は二人を見ながら、呆れたように笑った。
「遅いよ」
「……彩花?」
「私、知ってたから」
「何を?」
彩花は少しだけ昔を思い出すように笑った。
「翔が、瑠夏のこと好きだったこと」
「……え?」
周りのクラスメイトたちも、一斉に翔を見る。
「え、翔って中学の頃から瑠夏が好きだったの!?」
「マジで!?」
「初耳なんだけど!」
彩花が笑う。
「私が翔に告白したことあったでしょ?」
「あった!」
「そのとき、翔に振られたの」
翔は少し照れながら、頷いた。
「うん」
「そのとき翔が言ったんだよ」
彩花が翔を見る。
「『好きな人がいる。瑠夏が好き』って」
「えええええーーー!?」
「中学の頃から!?」
「翔、ずっと好きだったの!?」
一気に騒がしくなる。
翔は、隣の瑠夏を見る。
瑠夏は驚いたように翔を見つめていた。
「……うん」
翔は、みんなの前でも隠すことなく答えた。
「中学の頃から、ずっと好きだった」
「うわーーー!」
「めちゃくちゃ一途じゃん!」
「え、何それ!」
「そんなの少女漫画じゃん!」
「瑠夏、めっちゃ愛されてるじゃん!」
瑠夏の顔が、また赤くなる。
「翔……」
「だって本当のことだろ?」
翔は少し照れながら笑った。
「俺、瑠夏のこと好きだったから」
その言葉に、みんながまた騒ぎ出す。
「もう、何その堂々とした彼氏!」
「今の翔、めっちゃ自慢げじゃん!」
「そりゃ自慢したくなるよね!」
「こんな可愛い彼女だもん!」
「もう一回、ハチマキ交換のところから聞きたい!」
「体育祭のとき、どんな感じだったの!?」
「そのあとどうなったの!?」
「初デートは!?」
「どっちから手繋いだの!?」
「キスは!?」
「ちょっと待って!」
瑠夏が慌てて声を上げる。
「なんでそこまで聞くの!?」
「恋バナだから!」
「全部聞きたい!」
「教えて!」
「嫌だよ!」
真っ赤になった瑠夏に、みんなが大笑いする。
その隣で、翔も楽しそうに笑っていた。
テーブルの下で、そっと瑠夏の手を握る。
瑠夏も、その手を握り返した。
中学の頃。
まだ恋人ではなかった二人。
それでも翔は、ずっと瑠夏を好きだった。
そして今は――。
その大好きだった女の子が、自分の隣にいる。
「……翔」
「ん?」
「もう……」
瑠夏はそれ以上、何も言えなかった。
ただ、少し照れながら笑う。
翔も笑った。
3月。
春の気配が近づいている。
二人の恋は、みんなに祝福されながら、また新しい季節へ進んでいく。
卒業式から少し経った頃。
中学時代のクラスメイトが集まる、恒例の同窓会が開かれた。
このクラスでは、卒業してから毎年のように同窓会を開いている。
それくらい、みんな仲がよかった。
久しぶりに顔を合わせた瞬間から、店の中は懐かしい笑い声でいっぱいだった。
「うわー、久しぶり!」
「元気だった?」
「高校生活どう?」
そんな会話が飛び交う中、瑠夏を見つけた女子が、突然声を上げた。
「ねえ、ちょっと待って!」
「ん?」
「瑠夏、めちゃくちゃ可愛くなってない!?」
「え?」
「ほんとだ!」
「めっちゃ可愛くなった!」
「雰囲気変わったよね!」
「高校入ってから何があったの!?」
次々に言われて、瑠夏は困ったように笑った。
「そんな……変わってないよ」
「いや、変わったって!」
「絶対変わった!」
「なんかすごく女の子っぽくなった!」
「もう、やめてよ……」
真っ赤になる瑠夏に、みんなが笑った。
そのとき――。
「ふっふっふっ……」
一人の男子が、意味ありげな笑みを浮かべた。
「俺は、すっごい情報を握っている」
「なになになに?」
女子たちが一斉に食いつく。
「何それ!」
「早く言って!」
「もったいぶらないでよ!」
男子は得意げに周りを見渡した。
「俺らの学校にはな、体育祭でハチマキを交換して告白する伝統があってな」
「ええーーー!?」
「そんなのあるの!?」
「知らなかった!」
「でな」
男子はさらにニヤリと笑う。
「それをやった男が、この中にいる!」
「ええーーー!」
「誰!?」
「誰誰!?」
「めっちゃ気になる!」
男子は、ゆっくりと一人を指差した。
「それは……」
「それは?」
「翔、お前だ!!」
「えっ!?」
突然名前を出され、翔が目を見開く。
「俺!?」
「そう、お前!」
「なんで知ってんだよ!」
「同じ高校なんだから知ってるって!」
周りは一気に騒がしくなった。
「翔が!?」
「誰にハチマキ渡したの!?」
「それって告白したってことでしょ!?」
「待って、誰!?」
男子は、さらにもったいぶる。
「そしてなんと、受け取った女子は……」
「女子は?」
「誰なの!?」
みんなが身を乗り出す。
男子が、ゆっくり瑠夏を見る。
「瑠夏!」
「キャーーー!!❤️」
「ええええーーー!!」
「嘘ーーー!」
「瑠夏だったの!?」
「翔、やるじゃん!」
瑠夏は一瞬で顔が真っ赤になった。
「ちょっと……!」
隣では翔も、照れくさそうに笑っている。
「……まあ」
「まあ、じゃないでしょ!」
「それ、完全に告白じゃん!」
「青春すぎる!」
「すごーい!」
大騒ぎするみんなの中で、ふと一人の女子が思い出したように声を上げた。
「そういえばさ……」
「ん?」
「瑠夏って、その頃、連日告白されてたよね?」
「あーーー!」
「そうそう!」
「毎日のように誰かに呼び出されてた!」
「何人に告白されたか覚えてないよね!」
「放課後になると、また呼び出されてるって感じだった!」
「そうだった!」
瑠夏はますます恥ずかしくなって俯く。
「そんなにだったっけ……」
「そんなにだったよ!」
「しかも、どんどん可愛くなってたし!」
「そりゃ告白されるって!」
そして誰かが、翔を見る。
「……で、そのモテモテだった瑠夏を射止めたのが、翔ってこと?」
「そういうことじゃん!」
「すごーい!」
「翔、めっちゃ頑張ったんじゃん!」
「いや、ほんと!」
翔は少し照れながら、瑠夏を見る。
「……頑張ったよ」
「キャーーー!」
「何その顔!」
「翔、余裕じゃん!」
「もう彼氏だもんね!」
「もう……!」
瑠夏は真っ赤になって、翔の腕を軽く叩いた。
そんな二人を見ていた彩花が、ふっと笑う。
「……やっとか」
「え?」
瑠夏が振り向く。
「何が?」
彩花は二人を見ながら、呆れたように笑った。
「遅いよ」
「……彩花?」
「私、知ってたから」
「何を?」
彩花は少しだけ昔を思い出すように笑った。
「翔が、瑠夏のこと好きだったこと」
「……え?」
周りのクラスメイトたちも、一斉に翔を見る。
「え、翔って中学の頃から瑠夏が好きだったの!?」
「マジで!?」
「初耳なんだけど!」
彩花が笑う。
「私が翔に告白したことあったでしょ?」
「あった!」
「そのとき、翔に振られたの」
翔は少し照れながら、頷いた。
「うん」
「そのとき翔が言ったんだよ」
彩花が翔を見る。
「『好きな人がいる。瑠夏が好き』って」
「えええええーーー!?」
「中学の頃から!?」
「翔、ずっと好きだったの!?」
一気に騒がしくなる。
翔は、隣の瑠夏を見る。
瑠夏は驚いたように翔を見つめていた。
「……うん」
翔は、みんなの前でも隠すことなく答えた。
「中学の頃から、ずっと好きだった」
「うわーーー!」
「めちゃくちゃ一途じゃん!」
「え、何それ!」
「そんなの少女漫画じゃん!」
「瑠夏、めっちゃ愛されてるじゃん!」
瑠夏の顔が、また赤くなる。
「翔……」
「だって本当のことだろ?」
翔は少し照れながら笑った。
「俺、瑠夏のこと好きだったから」
その言葉に、みんながまた騒ぎ出す。
「もう、何その堂々とした彼氏!」
「今の翔、めっちゃ自慢げじゃん!」
「そりゃ自慢したくなるよね!」
「こんな可愛い彼女だもん!」
「もう一回、ハチマキ交換のところから聞きたい!」
「体育祭のとき、どんな感じだったの!?」
「そのあとどうなったの!?」
「初デートは!?」
「どっちから手繋いだの!?」
「キスは!?」
「ちょっと待って!」
瑠夏が慌てて声を上げる。
「なんでそこまで聞くの!?」
「恋バナだから!」
「全部聞きたい!」
「教えて!」
「嫌だよ!」
真っ赤になった瑠夏に、みんなが大笑いする。
その隣で、翔も楽しそうに笑っていた。
テーブルの下で、そっと瑠夏の手を握る。
瑠夏も、その手を握り返した。
中学の頃。
まだ恋人ではなかった二人。
それでも翔は、ずっと瑠夏を好きだった。
そして今は――。
その大好きだった女の子が、自分の隣にいる。
「……翔」
「ん?」
「もう……」
瑠夏はそれ以上、何も言えなかった。
ただ、少し照れながら笑う。
翔も笑った。
3月。
春の気配が近づいている。
二人の恋は、みんなに祝福されながら、また新しい季節へ進んでいく。



