新学期。
冬休みが明けて、いつもの学校生活が戻ってきた。
朝の廊下。
翔が拓実先輩を見つけ、足を止めた。
「先輩」
「ん?」
翔は制服のポケットから、小さなお守りを取り出した。
「これ」
拓実先輩が目を向ける。
「……俺に?」
「はい」
翔が差し出したのは、受験のお守りだった。
「この前、瑠夏と一緒に選んだんで」
その言葉に、拓実先輩の表情がほんの少しだけ揺れた。
「瑠夏が?」
「先輩に頑張ってくださいって伝えたいね、って」
翔はそう言って笑った。
拓実先輩は、お守りを見つめる。
嬉しかった。
瑠夏が、自分の受験を気にかけてくれていた。
それだけで、胸が温かくなる。
でも――。
本当なら。
瑠夏と一緒に選びたかった。
神社で並んで、いくつも並んだお守りを見ながら、
「これがいいんじゃないですか?」
なんて言われて。
「じゃあ、これにする」
そう笑い合いたかった。
そんな小さな願いが、もう叶わないことも分かっている。
「……ありがとう、翔」
拓実先輩は、お守りを受け取った。
翔は少しだけ笑って、
「それ、俺も一緒に選んだんで」
と言った。
そして、ほんの少しだけ声を落とす。
「大事にしてくださいよ」
拓実先輩は一瞬だけ翔を見る。
その言葉に込められた意味が、分からないはずがない。
「……ああ」
小さく笑う。
「大事にするよ」
翔も笑った。
嫌な空気にはならない。
ただ、お互いに分かっている。
瑠夏の隣にいるのは、今は翔だということ。
そして拓実先輩は、その現実を受け入れている。
「先輩」
「ん?」
翔が、まっすぐ拓実先輩を見る。
「受験、応援してます」
「……ありがとう」
拓実先輩は、お守りを握りしめた。
「二人とも、ありがとうな」
「はい」
翔が笑う。
拓実先輩も笑い返す。
そして、翔が先に歩き出した。
一人になった拓実先輩は、もう一度手の中のお守りを見る。
瑠夏と一緒に選んだお守り。
嬉しい。
本当に嬉しい。
それなのに――
胸の奥が、少しだけ痛かった。
「……一緒に、選びたかったな」
誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。
それでも拓実先輩は、すぐに顔を上げた。
受験が待っている。
今は、自分がやるべきことを頑張るだけ。
お守りを制服のポケットに大切にしまって、拓実先輩は歩き出した。
冬休みが明けて、いつもの学校生活が戻ってきた。
朝の廊下。
翔が拓実先輩を見つけ、足を止めた。
「先輩」
「ん?」
翔は制服のポケットから、小さなお守りを取り出した。
「これ」
拓実先輩が目を向ける。
「……俺に?」
「はい」
翔が差し出したのは、受験のお守りだった。
「この前、瑠夏と一緒に選んだんで」
その言葉に、拓実先輩の表情がほんの少しだけ揺れた。
「瑠夏が?」
「先輩に頑張ってくださいって伝えたいね、って」
翔はそう言って笑った。
拓実先輩は、お守りを見つめる。
嬉しかった。
瑠夏が、自分の受験を気にかけてくれていた。
それだけで、胸が温かくなる。
でも――。
本当なら。
瑠夏と一緒に選びたかった。
神社で並んで、いくつも並んだお守りを見ながら、
「これがいいんじゃないですか?」
なんて言われて。
「じゃあ、これにする」
そう笑い合いたかった。
そんな小さな願いが、もう叶わないことも分かっている。
「……ありがとう、翔」
拓実先輩は、お守りを受け取った。
翔は少しだけ笑って、
「それ、俺も一緒に選んだんで」
と言った。
そして、ほんの少しだけ声を落とす。
「大事にしてくださいよ」
拓実先輩は一瞬だけ翔を見る。
その言葉に込められた意味が、分からないはずがない。
「……ああ」
小さく笑う。
「大事にするよ」
翔も笑った。
嫌な空気にはならない。
ただ、お互いに分かっている。
瑠夏の隣にいるのは、今は翔だということ。
そして拓実先輩は、その現実を受け入れている。
「先輩」
「ん?」
翔が、まっすぐ拓実先輩を見る。
「受験、応援してます」
「……ありがとう」
拓実先輩は、お守りを握りしめた。
「二人とも、ありがとうな」
「はい」
翔が笑う。
拓実先輩も笑い返す。
そして、翔が先に歩き出した。
一人になった拓実先輩は、もう一度手の中のお守りを見る。
瑠夏と一緒に選んだお守り。
嬉しい。
本当に嬉しい。
それなのに――
胸の奥が、少しだけ痛かった。
「……一緒に、選びたかったな」
誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。
それでも拓実先輩は、すぐに顔を上げた。
受験が待っている。
今は、自分がやるべきことを頑張るだけ。
お守りを制服のポケットに大切にしまって、拓実先輩は歩き出した。



