愛してるの期限が切れる前に

 ふいに「幸せ」という言葉が心に浮かんだ。
 花と二人のときも幸せだったけれど、今の方がもっと心が満たされている。

「このままでいいのかな」

 それは、不安から来る疑問ではなく、自分を納得させたい気持ちが言わせたものだ。
 玲桜なら話せばわかってくれる。
 四年前、百花が信じた気持ちは嘘ではなかったのだから。

(信じる……か)

 玲桜のすべてを受け入れる覚悟があるかどうか。
 それは決して優しいことばかりではないだろう。許容できること、黙認できるもの。価値観と考え方の違いをどう摺り合わせていくか、どうやって自分の中に落とし込んでいくかの作業だ。
 それの重労働の糧になるのが、愛情なのだと思う。

(私は――)

 約半月、百花は玲桜を見てきた。
 その間、なんど玲桜に頼もしさを感じ、ときめきを覚えただろう。
 あの大きな手に、自分も触れたいと思ったか。
 心が玲桜との触れ合いを求めているのだと自覚すれば、萎んだ恋が再び息を吹き返すのは簡単だった。
 恋心を病んでいた誤解という毒が、玲桜と過ごす時間で浄化されていく。
 百花を見つめる眼差しの熱っぽさも、微笑みかけてくれる表情の柔らかさも、触れそうで触れない距離感も、焦れったくてそわそわする。

(よく眠ってる)

 ふくふくの花の頬を撫でていた百花が、玲桜の方へ手を伸ばしたのはほんの出来心からだった。そっと形のいい唇に触れると、花の頬くらい柔らかかった。
 その感触に目を細めたときだ。
 玲桜がふいにその手を掴んだ。
 瞼が開いて、モルフォ蝶色の瞳がこちらを見上げた。

「――っ、起きてたの?」
「今起きたんだよ」

 玲桜が話すと、息が指にかかった。

「こんなふうに触られると期待するよ? いいの?」