愛してるの期限が切れる前に

 もう彼女の中に、自分の居場所はないのではないか。
 愛されていた時期は終わってしまったのか。
 考えれば考えるほど、不吉なことばかりが頭を占める。

「おいおい、自己嫌悪はそのあたりにして、仕事の話をしていいか?」

 百花が自分の子を妊娠していると知ったときから、玲桜には野望ができた。
 必ず百花たちと幸せな家族になるのだ、と。
 そのためなら、邪魔なものはすべて排除していく。使えるものは取り込んで、己の武器にすればいい。

(例えば、鳳家の総帥の座とか?)

 まったく種子が動かなかったが、百花を得るためなら獲りに行くまでだ。
 邪魔立てするのが実父だろうと、祖父だろうと関係ない。
 認めないのなら、認めさせるだけだ。

「来週の会合で、大詰めだ。わかってるだろうけど、ヘマはするなよ」
「誰に言っている」

 四年かけて、根回しをしてきたのだ。
 広告塔までして、顔と知名度を売った。無視できないだけの存在を示した。その裏では、役員を懐柔し、業績が下がっていた分野の梃子入れをして、収益を向上させた。
 いよいよ次の臨時総会で玲桜の総帥決定が決まる。

「自信満々なのは結構だけど、百花ちゃんに余計な心配させたくないならそろそろ身辺整理はしておけよ)
「なんの話だ?」
「これだよ」

 そう言って、熊谷が週刊誌の見開き頁を開いて見せた。

【人気モデル、リリカ、遂に結婚か!? お相手は若手実業家】

 そこには、二人を隠し撮りした写真が掲載されていた。
 隣には玲桜と似た容貌の男だ。サングラスをしているせいか、一見しただけでは玲桜とも見えた。

「お前さ、昔あいつが恋人役買って出たの覚えてるか?」

 熊谷の言葉に、玲桜は目をまたたかせた。

「そんな話したか?」